『ザ・ハリケーン』は、黒人ボクサーの獄中手記を映画化した感動の実話ドラマ。デンゼル・ワシントン演じる“ハリケーン”カーターは、人種差別とえん罪の犠牲者となり、殺人容疑で有罪判決を受け投獄されるが、彼の無実を信じる人々の助力で再審の末、一度はあきらめていた自由を勝ち取る。準備期間を含めると約7年という長い期間をかけて慎重に映画化されたが、この映画にも訴訟という有名税がついて回った。
“ハリケーン”カーターと対戦した白人ボクサーは、『映画中、自分が不公正に試合に勝ったように描かれているのは遺憾だ』とし、名誉毀損の訴訟を起こした。カーターの弁護団からは、無実の証拠を調べ上げたのは映画に出てくる少年ら一般の支持者ではなく、自分たちだというクレームがついたりもした。そんな法廷内外のゴタゴタはアカデミー会員の忌み嫌うところ。おかげで、アカデミー主演男優賞の最有力候補と見られていたワシントンは、惜しくも受賞を逸してしまう。 『エリン・ブロコビッチ』も例外でなかった。『全米至上最高額の和解金3億3,300万ドルを勝ち取った』という女性の実話を映画化したのがこの映画。職もなく、お金もなく、教育もない“3ない”のエリンが、不屈の精神と一途な努力で、資産300億ドルの大企業を相手に訴訟を起こし、公害で苦しむ住民のために、多額な和解金をまとめ上げたというお話だ。 ジュリア・ロバーツが演じた主役のモデルとなった実在のエリンは、この映画のおかげで有名人となったが、そんな名声はトラブルまでも彼女に持ち込む。元夫、元恋人、そして彼らの弁護士がつるみ、エリンに対して、彼女と彼女の上司(法律事務所の上司で、映画にも実名で登場している)との男女関係を世間に暴露されたくなかったら金を払えと脅迫してきたのだった。彼女はすぐに警察に訴えたので、脅迫者らはまもなく逮捕されたのだが、『エリンだけがお金持ちになって』といった嫉妬からの犯行といえるだけに、名声の思わぬ副産物が苦い教訓を残した。実話映画の裏には多くの人々の思惑と利害が交錯するのである。
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