ハリウッドが、タックス・シェルター(節税優遇措置)を利用して、映画を作り始めたのは1960年代、アメリカで始まった。1986年に税法が改正されるまで、自国の高額納税者がハリウッドのお得意様だった。近隣のカナダにもタックス・シェルターがあった。『ターミネーター2』('91)にはカナダ・マネーが使われた。日本でもバブル時代には、タックス・シェルターを利用した映画投資が盛んだった。高額納税者であった不動産業者らが節税と投資を目的として、ハリウッド映画に投資した。その後バブルが去り、タックス・シェルターも廃止された。次なる資金源として白羽の矢が立ったのがドイツの投資家という訳だ。

 ハリウッド映画の主たる資金源となっているのは、ドイツのタックス・シェルターとドイツからの投資だ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で、「映画のつくり方」を教える映画プロデューサーのレオナルド・シャピロさんによると、映画製作会社が、ドイツのタックス・シェルターを利用すると、製作予算の100%まで資金調達することが可能だという。投資家から集めた現金をドイツのペーパー・カンパニーに入金し、製作費に当てることができる。ドイツ・マネーを利用するためには、北米その他のメジャーな地域での配給会社を確保していなければならない。配給会社から支払われる“前売り金”の一部をペーパー・カンパニーに戻すことが条件とされる。条件を満たせば、製作会社は金融機関からの融資を最小限に抑えることができる。スタジオからの資金援助を受けないので、映画のクリエイティブ・コントロールを握ることができる。ドイツ・マネーは、映画製作者たちにとって申し分ない資金源といえる。

 パラマウント、ユニバーサルといったメジャー・スタジオはもちろんのこと、ミューチュアル、ニューラインシネマ、マンダレー、フランチャイズ、スパイグラスといった独立系製作会社もドイツ・マネーを資金源としている。これらの製作会社は独立系とは言え、メジャー・スタジオと強いパイプをもつ(詳細は<「体制内インディ」製作会社の台頭/上>参照)おかげで、北米での配給はもちろんのこと、メジャーな海外での配給会社をも確保しているので、このシステムを利用することができる。ハリウッドにとっては良いことずくめの資金調達ワザなのだが、昨年末あたりからドイツの好景気に蔭りがさし始めてきた。ドイツの株価バブルがはじけた。いつまでドイツ・マネーに頼りつづけることはできるか。次なる金脈になるのは誰か、傍観するハリウッドの人たちは多い。

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