TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 著作権の登録

 著作権は創作者が著作性のある著作物を創作し、有形的な媒体に固定したときに発生する。著作物が発行されることは条件ではないため、著作権は人目に触れずに発生する。自分の著作権を登録することは著作権の発生条件ではない。しかし、著作権登録をしておくと、いろいろな恩恵を受けることができるので、特に海外に権利をライセンスしたいと思っている方は、事前に著作権登録することをお勧めする。どういった恩恵があるかというと、

(1) 登録証certificate of registrationは一応の証拠prima facie evidenceとなる。最初の発行の前または最初の発行の日から5年以内に著作権登録を行なうと、登録証に記載された事実とその権利の有効性について、一応の証拠となる。
 すなわち、登録証に記載された事実がすべて真実であるという法律上の推定を受ける。したがって、自分の著作権が第三者に侵害された場合、著作権登録しておくと、自分がその著作物の権利者であることを証明する責任から解放されることになる。

(2) 法定損害額statutory damagesの賠償を受けられる。著作権侵害訴訟で、原告側に損害が発生していない場合でも、勝訴した場合に法律で定められた損害額が賠償される。
 たとえば、無関係の第三者があなたの著作物を勝手にアメリカで著作権登録したとしよう。まさかと思われるであろうが、実際に起こった話だ。登録されただけなら、まだ損害が発生していない。まず自分の著作物を登録して、それから法定損害賠償を請求することができる。勝訴すれば、次に記載される弁護士費用も回収することができる。
 なぜ、無関係の第三者が勝手に著作権登録することができるのか? 著作権局は、権利の内容についての審査は行わない。申請用紙に必要事項が記入され、著作物のコピーと手数料が払われれば、誰でも登録することができる。

(3) 弁護士費用の賠償を受けられる。著作権侵害訴訟で勝訴した場合、自分たちが支払った合理的な弁護士費用を敗訴した側から取戻すことができる。
 著作権登録の仕方は簡略な手続きである。著作物が出来上がったら、(1)著作物の種類にしたがった用紙に必要事項を記入し、(2)手数料を支払い、(3)著作物のコピーといっしょに、著作権局に提出する。著作権局は、受領した申請書の様式審査を行い、質問がある場合には、著作権者もしくはその代理人弁護士に連絡をとる。6ヶ月から12ヶ月くらいで登録証が送付される。著作権登録は権利発生条件ではない。著作権の保護期間は、創作者の生存プラス70年。職務著作の場合、発行の時から95年もしくは創作の時から120年。登録日とは無関係となる。著作権登録用紙は著作権局のホームページからダウンロードできる。

 著作権が譲渡された場合には、譲渡証を著作権局に登録する。米国がベルヌ条約に加盟した際、著作権登録が侵害訴訟の訴訟要件からはずされたが、譲渡証を登録することにより、譲渡の事実を実際に知らない人でも、これを知らないと主張できないように擬制告知constructive noticeすることができるので、登録のメリットは大きい。
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