TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 オプション契約で許諾する権利・留保する権利

 前号に続いて、プロデューサーがオプション契約で許諾する権利と留保する権利について解説する。

 プロデューサーが原作者から映画化に必要な権利を買い取る場合、映画を製作する権利はもちろん、劇場配給権、ホーム・ビデオ権(DVDを含む)、有料・無料テレビ放映権、サウンドトラックの権利、マーチャンダイジングの権利など、すべてのメディアで映画を使用する権利を買い取る。このなかに、映画のリメイクの権利、続編を製作する権利を含むかどうかを明確にする必要がある。

 以前、『風と共に去りぬ』の続編をつくる権利をめぐって裁判になったことがある。原作者であるマーガレット・ミッチェルは、製作会社(のちにMGMに吸収される)に対して5万ドルで『風と共に去りぬ』の映画化権を売った。1936年のことである。彼女の死後、財産管理人となった信託銀行がMGMを相手に『風と共に去りぬ』の続編を映画化する権利を争った。裁判で、1936年の契約には、続編の映画化権を含んでいないことが明確になった。
 その後1994年、『風と共に去りぬ』の続編がテレビ映画化され、「スカーレット」というタイトルでCBSで放映された。その時、製作会社が財産管理人に対して支払った続編映画化権の代金は900万ドルと言われる。『風と共に去りぬ』は、長い期間にわたり利益を生み続けるキラーコンテンツの代表と言えよう。

 別の裁判例を紹介しよう。『カサブランカ』の続編をめぐる争いだ。『カサブランカ』という映画は、「Everybody Comes to Rick’s」という演劇が基になっている。1942年、ワーナーブラザースはその劇作家らに2万ドルを支払い、原作権を買い取った。1983年、ワーナーブラザースは『カサブランカ』の続編を製作し、NBCで放映した。原作者である劇作家らは、ワーナーブラザースとNBCを相手に自分たちが続編を映画化する権利を留保していると争った。しかしこの裁判で、1983年の契約では続編を含むすべての権利がワーナーブラザースに譲渡されていたことが確認された。

 オプション契約では、通常以下の権利が許諾される。許諾権利に含まれないその他の権利は留保される。

 If the Option is exercised, Company automatically and immediately shall own and be vested with, and Owner automatically and immediately shall grant, convey, assign, transfer and set over to Company, exclusively and in perpetuity, for the entire universe, all right, title and interest in and to the Property (excluding those rights expressly reserved to Owner set forth below), which Rights shall include, but shall not be limited to, the following:

Motion Picture Rights.
Adaptation Rights.
Music/Soundtrack Rights.
Advertising/Publication Rights.
Broadcast/Dramatization Rights.
Distribution Rights.
Title Rights.
Merchandising/Commercial Tie-Up Rights.
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