TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 映画の売り方―ライセンス契約

 前回に続き、コンテンツをライセンスする場合の法的な注意点を説明する。コンテンツを海外にライセンスする場合、権利者はライセンサーとなる。コンテンツを輸入する場合は、日本の配給会社はライセンシーとなる。どちらになるかによって、利害が全く逆になるので注意を要する。ライセンス契約ではどういった点について合意することが重要か。一般事項を解説する。
(1)契約当事者の特定が必要だ。

 誰がライセンサーとなり、ライセンスを許諾するのか。本当にライセンスする権限があるのかどうか、権利関係をチェックすることが重要。チェーン・オブ・タイトルChain of Titleのひとつひとつが繋がっていないといけない。原作権や脚本権、楽曲使用権などがきちんとクリアされているかどうか。日本のコンテンツを海外に売る場合も同様。

(2)ライセンスは独占的かどうか。

 独占的ライセンスを受ける場合、サブライセンスすることができるかどうかも合意する。映画配給会社が他社に、ホーム・ビデオやテレビ放映権をサブライセンスする場合に必要となる。ライセンサーが、サブライセンス相手やその契約内容について、事前同意することができるかどうかについても合意する。

(3)ライセンス地域。映画を利用することのできる地域を指定する。
(4)言語の指定も必要。

 吹き替えと字幕か、オリジナルの言語も含まれるのか、合意する。吹き替えのための経費についても合意する。

(5)ライセンス期間。

 独占的なライセンスを受ける場合、支払ったライセンス料と経費を回収し、利益を生み出すまでにどのくらいの期間が必要かといったビジネス判断でライセンス期間を決める。ライセンスがいつ始まるのか規定することも重要。ライセンス期間を更新できるかどうか、更新の条件についても合意する。

(6)ライセンスを許諾する権利の内容。

 劇場配給権Theatrical distributionには、劇場と劇場でない場所での上映権が含まれる。ホーム・ビデオの権利にDVDがふくまれるかどうか。テレビ放映権の内容。ビデオ・オン・デマンドが含まれるかどうかも注意が必要。その他の二次使用として、サウンドトラックの権利、マーチャンダイジングの権利、出版権、映画の続編を優先的に買う権利を含むのか、といった点も合意する。

 また、近年話題となっているインターネットで配信する権利についても合意する。インターネットでの権利で問題となるのは、地域を限定できないことだ。ライセンス契約で「日本」を地域指定しても、ボーダーレスなので、ライセンスを受けていない地域にまで及ぶ。したがって、インターネットでの権利を限定する方法としては、言語指定を行ってライセンスするとか、もしくはどういったコピーガードができるかどうかも調べることが必要だ。

許諾される権利の記載具体例Licensed Rights
A. Theatrical Rights: Licensed
Theatrical []Yes []No
Non-Theatrical []Yes []No
B. Video Rights:  
  Home Video Rental []Yes []No
  Home Video SellThru []Yes []No
  Holdback: until 6 months from the date of the first theatrical release in the territory.
C. Ancillary Rights:    
  Airline []Yes []No
  Ship []Yes []No
  Hotel []Yes []No
  Holdback: none    
D. Pay Television Rights:    
  Pay-Per-View []Yes []No
  Demand View []Yes []No
  Terrestrial []Yes []No
  Cable []Yes []No
  Satellite []Yes []No
  Holdback: until 6 months from the earlier of first home video release.
E. Free Television Rights:    
  Terrestrial []Yes []No
  Cable []Yes []No
  Satellite []Yes []No
  Holdback: until 12 months from the earlier of first home video release.
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