TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 ファイル交換ソフトの配布は合法?(1)

 技術の革新は新たな問題を引き起こす。ファイル交換ソフトを使用することによって、インターネット上で音楽や映画などのコンテンツを無料でダウンロードして使うことが可能になっている。コンピューターがインターネットに接続されていれば、誰でもファイル交換ソフトをゲットすることができる。ファイル交換を巡っては、ナップスターがファイル交換の差し止め判決を受けたことがある。今回争われたファイル交換ソフトの裁判では、アメリカの第9控訴裁判所はナップスターと異なった判決を下した。
 原告となったのはファイル交換ソフトが出回ることによりコンテンツが無料配布されてしまうことを懸念するMGM、コロンビア・ピクチャーズ、パラマウント、20世紀フォックス、ユニバーサル、ワーナーブラザースといった映画会社。そしてアトランティック、エレクトラ、ワーナーミュージック、キャピトルレコード、モータウンといった音楽会社である。著作権の間接侵害の責任を問われたのは、P2P(※Peer to Peerの略。個人対個人の取引のこと)を開発したグロックスター、Morpheusのストリームキャスト・ネットワークス、そしてカザー(Kazaa)のシャーマン・ネットワークスであった。

 グロックスター、ストリームキャスト、シャーマンが開発し、配布したファイル交換ソフトとは、インターネットに接続しているパソコン同士が保有するデータファイルを互いにコピーすることができるように手助けする。ナップスターのように、セントラルサーバーを仲介することはない。パソコン利用者同士が直接相手方のファイルをコピーする仕組みになっている。
 このファイル交換ソフトを利用して相手方の保有するデータファイルをダウンロードする行為は、P2Pだが、著作権で保護されているコンテンツをコピーする場合、利用者たちは著作権法違反の責任に問われるであろう。では、ファイル交換ソフトを配布した提供者は著作権の間接侵害になるであろうか? 第9控訴裁判所は、P2Pのコピーを手助けするファイル交換ソフト提供者には著作権の間接侵害の責任はないとした第一審の裁判所の判断を再確認した。
 裁判所はその根拠として、1984年に下されたユニバーサル対ソニー(Universal City Studios v. Sony Corp. of America)の判決を引用している。その趣旨は、録画機能をもったビデオ機はコンテンツを合法に録画することを可能にした。だからといって、利用者がコンテンツを違法に録画することまでの認識があったとはいえない。最高裁判所は、ソニーには違法行為についての認識はないので、ソニーのベータマックスには著作権間接侵害の責任はないと判断した。その後のビデオ市場の拡大、とくにDVDが出現してからの二次使用のマーケットは巨大な利益を生み出す。ビデオの出現に著作権侵害という脅威を感じたスタジオ。しかし皮肉なことに、コンテンツという財産をビデオ化することによってスタジオは大いに潤うことになる。果たして、今回も同じような経済効果が見込めるか?
 ファイル交換ソフトの判決に対して、技術の勝利と喜ぶ被告側。「エンタメ業界は新しい技術と争うべきではない。むしろP2Pと共存し共に繁栄するよう努めるべきだ。」と、勝訴したシャーマン・ネットワークの最高執行責任者はいう。これに対して音楽、映画業界は今度はファイル交換ソフトを利用している個人に矛先を向けそうだ。
■判決はここから> http://news.findlaw.com/hdocs/docs/mgm/mgmgrkstr81904opn.pdf
<<戻る


東宝東和株式会社