加藤さんが米国に単身乗り込んできたのは今から6年前。無名の俳優ならまだしも日本で大スターだった加藤さんが何故ゼロからの出発をしなければならないのか?というのがハリウッド行きを決めた当時の周囲の反応だったようだ。これに対し加藤さんは「映画の頂点とされるハリウッドがどんな所か見てみたかったから」とあっさり答える。俳優というより自分に厳しい仕事人というイメージの加藤さんにとって、安定などは取るに足らないものらしい。
日本人が海外で一番苦労するのはやっぱり言葉。加藤さんにとってもやはり英語のカベは厚かった。ハリウッドで役を勝ち取るには訛りのない英語を話す事が絶対条件。最初の2年間はアクセントを徹底的に勉強したという。「とにかく英語が駄目では話にならない。徹底的にやりましたね」しかし、映画の英語となると奥が深い。役によってははっきりと発音し過ぎると良くないものもある。「昨日どこにいたんだ?みたいな単純なセリフ一つ取っても、いろんな言い方がある。監督はいろんな要求をしてくるから本当に大変ですよ」演技はもちろん英語の方も研鑚を積まなければならない。凡人には気の遠くなるような話。
日本映画で何度も主役を張っている加藤さんだが、ハリウッドの製作現場はどのように映るのだろうか。一番大きな違いはスタッフの年齢だという。「とにかく若いスタッフが多い。監督やカメラマンにも僕より若いのが結構いる。面白い事をやる才能なら、経験が浅くてもよしやってみろ、と言ってくれるのがハリウッドでしょうね」チャンスの国アメリカ、ハリウッドももちろん例外ではないのだ。
英語と演技のレッスンをし、英語の台本を覚え、オーディションを受け、プロデューサーやディレクターと打ち合わせをこなす。日々のスケジュールはかなりタイト。その合間を縫って帰国し、日本での仕事をこなしている。何故そんなにしてまで、という質問に、仕事師加藤雅也はしばらく沈黙した後言った。「やっぱりいつの日か、やったなあという作品を作りたいからだね」
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