TEXT BY はせがわいずみ(FEATURE PRESS)

 観光ガイドブックやTVの紹介番組、映画などで、「ロサンゼルス」を表現したい時に必ずと言っていいほど写真や映像が紹介されるハリウッドサイン。まさに、ロサンゼルスの代表的ランドマークだ。しかし、このサイン、一体いつ、誰が、どういう目的で建てたのか。どれほどの大きさのものなのか。あまり詳しくは知られていない。そこで、今回はこのハリウッドサインについて紹介しよう。

1.どこにある?
 ハリウッドサインのある山は「リー山」で、標高1640フィート(約500メートル)。山頂から若干下にあるサインは、1文字、だいたい縦45フィート(約14メートル)、横は文字によって違い31~39フィート(約10~12メートル)。素材は金属製のパネルだ。

2.いつ、なぜ作られた?
 最初にサインがお目見えしたのは23年で、入居者を募るための宣伝用だった。当時、この地区はオレンジやレモンの木の農園か、それ以外は乾いた地肌をさらす何もない場所だったのだ。当然名も無き土地だったこの場所。それでは売るのに都合が悪いと、地主で開発業者のウィルコックス夫妻が、土地に名前を付ける事を考え、夫人が列車で乗りあわせた時に耳にした「ハリウッド」がいいのでは…ということになり、命名された。しかし、当時は「ハリウッド」ではなく、「ハリウッド・ランド」で、サインも「HOLLYWOOD LAND.」と、LANDにピリオドまで付いていた

最初は「HOLLYWOOD LAND.」
だったハリウッドサイン
C: Bruce T. Torrence

現在のハリウッドサイン
Walk of Fame and Hollywood Sign photos used with permission from the Hollywood Walk of Fame

3.LAND. が消えて建て直し
 1949年、このサインは老朽化に加え、崖崩れで「Land.」が崩壊した。みすぼらしいので、「LAND.」を撤去し、残されたほかの文字を応急整備した。撤去されたのは、売れない女優がサインの上から飛び降り自殺をしたから…、サインが13文字で不吉だから…、というエピソードを聞くが、実のところは崖崩れが原因だったようだ。なぜなら、ピリオドも含めれば14文字だし、自殺があったのは32年9月のこと。撤去される17年前だ。そして、この自殺した女優は、ニューヨークでは成功していた舞台女優で、ロスに来て数カ月たっても映画の役が回ってこないというのを苦にして、高さ約15メートルの「H」の文字の上から飛び降りたのだ。自殺した次の日、彼女の元にはぜひ出演してほしいと、台本が郵便で届いたというのがこの話の詳しい内容。売れない女優というのは間違いだ。
 70年代に入り、傷みが激しく、いよいよ壊れてきた「HOLLYWOOD」サインすべての文字の再建築計画が始まる。寄付金を募るものの、なかなか集まらず8年の月日が流れた。結局、1文字2万7700ドルでスポンサーを募る格好になったサインは、映画や音楽のスターらが名乗りを挙げ、ようやくリニューアル工事がスタート(それぞれの文字のスポンサーは下記の通り)。そして、78年11月14日、CBSテレビで、新しいハリウッドサインのお披露目が全米中に放映された。ちなみにこの年は、ハリウッド誕生75周年の記念の年でもあった。

◆◆◆それぞれの文字のスポンサー ◆◆◆
 ・・・テレンス・ドネリー(ハリウッド・インディペンデント新聞)
 ・・・ジョバンニ・マッツァ(イタリアの映画プロデューサー)
 ・・・レス・ケリー(ブルー・ブックの代表)
 ・・・ジーン・オートリー(西部劇映画スター)
 ・・・ヒュー・ヘフナー(プレイボーイ・エンタープライゼス代表)
 ・・・アンディ・ウイリアムズ(歌手)
 ・・・ワーナーブラザース・レコード
 ・・・アリス・クーパー(ロック歌手)
 ・・・デニス・リドケ(グラフィック系出版社代表)

4.現在のサイン
 現在私たちが目にしているのは、70年代に完成した、今月22歳になるハリウッドサイン。管理は、ロサンゼルス市とハリウッドサイン・トラストが行っている。宣伝用に、文字が「HOLLYWOOD」から「「HOLLYWEED」(マリファナ新法施行の76年1月)などに変えられたこともあったり、かつては触れることもできたサインだったが、今は立ち入り禁止区域。周辺住人からのクレームで、近くまで寄ることはほとんどできない。2000年を迎えた瞬間には、さまざまな色でライトアップされたのは記憶に新しいが、住民の許可を取るのがかなり大変だったらしく、今後、こうしたライトアップなどは当分行われないそうだ


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