TEXT BY はせがわいずみ(FEATURE PRESS)

 エリン・ブロコビッチ講演
 今年のアカデミー賞で、ジュリア・ロバーツが主演女優賞を受賞した映画『エリン・ブロコビッチ』(00)は、実在の人物エリン・ブロコビッチのサクセスストーリーを描いた作品で、米国で1億2,500万ドル、日本でも12億円の大ヒットを記録した。映画も気に入り、ジュリアの演じるエリンも(バスト以外は)自然で良かった。しかし、今日ほどジュリアの演技力に感心させられたことはなかった。
 10月17日(水)、映画・テレビ用のスタジオがあるロサンゼルス郊外のマンハッタンビーチにほど近い、レドンドビーチ・パフォーミング・センターで、エリン・ブロコビッチ本人の講演会が行われた。

 毎年、著名人8人を月替わりで招いて行われる「Distinguished Speaker Series」の一環として開かれた同講演会、今シーズンのオープニングを飾ったのがエリンだった。さて、どこがジュリアの演技力に感心させられたのか。
約1500席の会場はほぼ満員御礼だった
 実は、エリンの講演を聴いているうちに、いつのまにか映画『エリン・ブロコビッチ』を観ているような気になっていたのである。 映画の中のジュリアとステージ上のエリンが重なったのだ。
 しゃべり方、仕草、態度、発する雰囲気など、映画の中でジュリアが体現したエリンがそこにいた。というか、エリンがオリジナルだから…と考えてはっとした。そう、ジュリアはエリンを見事に演じていたのである。元々持っているものが似ているというのもあるのかも知れないが、私はジュリアの演技力と、加えてスティーブン・ソダーバーグの演出力に驚嘆した。

 講演会でエリンは「誰でも人生を変えることはできる」というのを強調した。また、「自分の経験をみなさんと共有したいと思うから、ここに来ました。失敗を恐れず、信じて進むことが大切だと思います」とスピーチ。
ジョークを交えて、ズバズバとスピーチするエリン
 映画の裏話としては、「映画化の話を聞いた時、誰が自分の役を演るのかはあまり気にしなかったわ。ゴールディ・ホーンとか好きだから、彼女だったらいいなぁ…って漠然と思っていた。そしたら、ジュリア・ロバーツでしょ。実は、えっ?! って思った。でも、私が一番気にしたのはエドの役。アルバート・フィニーに決まって本当に嬉しかったわ」と言った後、「でも、映画のエリンのスカートは長すぎよ。私はもっと短いスカートをはいてたわ。そして、事務所の服装規定にいつも違反していたの」と、歯に衣着せぬ彼女らしいオチを付け足した。
 講演終了後の観客とのQ&Aセッションでは「ヒンクリー地区の人々とは、仕事上の付き合いだけだったのか? また、今でも連絡を取り合っているか?」という質問もきかれた。

 エリンは、「とんでもない! 私は弁護士じゃないから、彼らとは友達のような付き合い方だったわ。それに、今でも時々連絡を取り合っているし、中には親友になった人もいるのよ。でも、あの後、50人もの人が亡くなってしまった…」と答えている。

 2度の離婚を経験し、社会からつまはじきにされながらもがんばり続け成功したエリン。「自分はみんなと同じ普通の人」というのを強調する彼女には、すでに多くの女性ファンがいる。
実物のエリン・フロコビッチ ジュリアとはまた違った
魅力の持ち主 (C)Distinguished Speaker Series
 「映画にもなって、特別な人というイメージだったけど、実際に会うと私たちと同じシングルマザーの、普通の人。彼女は私たちに勇気と希望を与えてくれるわ」と会場に集まったシングルマザーのファンたちはコメントした。(しかし、現在エリンは結婚しているのでシングルマザーではなくなったけど…)。

 エリンは来月、自叙伝を出版し、来年はNBCでトークショー番組を持つ。アメリカのヤンママの心をがっちりつかむ彼女は、今後も多くの人を救っていくだろう。

文&写真=シネマ・ナビゲーターはせがわいずみ
Text & Photo by Cinema Navigator Izumi Hasegawa


<<戻る


東宝東和株式会社