TEXT BY はせがわいずみ(FEATURE PRESS)

 AFIフィルムフェスティバル報告

 11月1日から11日までの10日間、ハリウッドの5つの劇場を会場にAFIフィルムフェスティバルが開催された。ことしで15年目になる同映画祭は、映画の大学院のような学校アメリカン・フィルム・インスティチュートが主催するもの。去年もご報告したように世界各国から招待された作品が上映されるので、海外の映画を観る絶好のチャンスとしてハリウッドの映画人が注目している映画祭の一つだ。
 オープニングを飾ったのはチェコの映画『Dark Blue World』(01)。ストーリーは友人同士の2人の兵士が1人の女性に恋するという『パール・ハーバー』(01)を彷彿させるものだが、限られた予算で効果的な戦闘シーンを演出するなど、随所に工夫が観られる作品だった。

 クロージングはビリー・ボブ・ソーントンとハル(アメリカではハリー)・ベリーが共演する『Monster’s Ball』(01)。オープニングとクロージングの両作品はリニューアル工事を済ませたグローマンズ・チャイニーズ・シアターで上映された。そのほか、大人の極上サスペンスとして前評判も上々のオーストラリア映画『LANTANA』(01)や、サンダンス映画祭で主演2人に審査員特別賞が贈られた『In the Bedroom』(01)、フェイ・ダナウェイの監督デビュー作『The Yellow Bird』(01)なども公開された。
ことしの公式カタログ
 また、近年のアジアブームに乗って、アン・リー監督がフィルムメイカー・トリビュートに選ばれ、彼の代表作6本の上映と、本人とのQ&Aセッションが行われた。
 日本映画は、インターナショナル・コンペティション部門に万田邦敏監督の『UNLOVED』(01)と、香港、台湾、韓国、インドなどから8作品が上映されたアジアン・ニュー・クラシック部門の黒沢清監督『回路』(00)が公開されたほか、日本のアニメ2本のために作られたアニメ・スペシャルイベントで、『ああっ女神さまっ』(00)、『エスカフローネ』(00)が上映された。

 世界40カ国から104本が上映されたことしの映画祭で、最優秀賞となる審査員賞を受賞したのはスウェーデンの映画『THE NEW COUNTRY』(00)。スウェーデンに住むことを拒否された40歳のイラン人男性と15歳のソマリア人少女が、安住の地を求めて共に旅をするロード・ムービーのこの映画はすでにヨーロッパでさまざまな賞に輝いている秀作だ。
ハリウッド・ブルバード沿いの街頭につけられたバナー。ハリウッド&ハイランドも
公式スポンサー
 また、次点となる特別注目映画賞は、クロアチア人兵士とセルビア人兵士の数奇な運命を、戦争報道と国連軍の介入を交えて描いた『NO MAN'S LAND』(00)が受賞した。すでに今年のカンヌ映画祭で最優秀脚本賞を受賞したこの映画は外国語映画ながらすでに年内に全米公開が決まっているので、来年のアカデミー賞の最有力候補となりそうだ。


文&写真=シネマ・ナビゲーターはせがわいずみ(フィーチャープレス)
Text & Photo by Izumi Hasegawa/ CinemaNavigator


<<戻る


東宝東和株式会社