TEXT BY はせがわいずみ(FEATURE PRESS)

 ハリウッド歴史探訪 その8 エル・キャピタン劇場
 ことしのアカデミー賞授賞式会場となるコダック劇場の向かいにあるエル・キャピタン劇場は、1月10日号でご紹介したエジプシャン劇場やチャイニーズ・シアターをプロデュースした興行師シド・グローマンによって作られた。
 エジプシャンが“エジプト”を、チャイニーズが“中国”をテーマにしたように、エル・キャピタンは“スペイン”と“東インド”がテーマ。サンフランシスコの建築家G・アルバート・ランズバーグの手によって、外観はスパニッシュ・コロニアル様式、内装は東インドの雰囲気を持つよう仕上げられた。

 1926年3月にオープンしたエル・キャピタン劇場は、ほかの劇場が映画専門なのに対し、お芝居も上演することのできる劇場だったことから、「ドラマをしゃべるハリウッドの最初の小屋」として親しまれた。オープンから10年の間には、実に120以上もの芝居が上演され、演目の中には『Anything Goes』や『No, No, Nanette』などもあり、クラーク・ゲーブルやウィル・ロジャースなどがステージに立った。
ロビーには東インドをイメージした壁画が描かれている
 映画のプレミアとしては、1941年に『市民ケーン』が行われ、同プレミア上映の成功に手応えを感じたパラマウントは、エル・キャピタン劇場を映画館に改装することにする。1年間後、エル・キャピタン劇場は、モダン・アートの映画館として生まれ変わった。その後、1989年にディズニーが買い取り、建築歴史研究家などの協力を得て2年間の大改装を行い、1991年の映画『ロケッティア』のプレミア上映が再オープンを飾った。

 以後、エル・キャピタン劇場は、通常はディズニー映画のプレミアやその映画の上映などが行われ、『トイ・ストーリー2』('99)など子供向けの作品の上映時には、映画のキャラクターが登場するミュージカルが映画とセットになって上演されている。また、『リトル・マーメイド』('89)や『エビータ』('96)などのミュージカル映画では、カラオケのような字幕が出て観客も一緒に歌を楽しむ仕掛けの上映プログラムも組まれている。音響のいい劇場ならではの企画だ。
 加えて、劇場に隣接するエル・キャピタン・エンターテインメント・センターでは、上映作品にちなんだ遊戯施設が設けられることもあり、映画を見終わった後ゲームなどで遊べるため、エル・キャピタン劇場は子どもだけでなく大人からも絶大な人気を得ている劇場となっている。

 エル・キャピタン・エンターテインメント・センターは、劇場建設に先駆け1921年に作られた建物で、ロサンゼルス市庁舎やグリフィス天文台、シュライン・オーディトリアムを手がけた建築家ジョン・C・オースティンのデザイン。現在は7つの部屋を持つレンタル・イベント・スペースとして機能しており、エル・キャピタンで上映された映画にちなんだ遊戯施設が置かれたり、プレミア上映の後のパーティや、映画・テレビの撮影などに使われている。
エル・キャピタン劇場とエル・キャピタン・
エンターテインメント・センター
 ちなみに『オー・ブラザー!』(00)のプレミアの際は、7部屋すべてを貸し切ってプレミア・パーティが行われ、カントリー・ロックバンドのライブ・ステージの会場があったり、クラブ系のダンス・ルーム、静かな音楽が流れる部屋、馬小屋のようなデコレーションが施された部屋などバラエティに富んだパーティを演出するのに役立てていた。
◆エル・キャピタン劇場
(El Capitan Theatre)

住所:
6838 Hollywood Blvd., Hollywood, CA 90028
電話: 323-468-8262
Fax: 323-467-0922
パイプオルガンを持つ映画館も珍しい
■エル・キャピタン劇場 オフィシャルページ(英語)> http://cms.disney.go.com/disneypictures/el_capitan/


写真はすべて
(C)The El Capitan Theatre Company. All Right Reserved
Photo by Gary Krueger

文=シネマ・ナビゲーターはせがわいずみ(フィーチャープレス)
Text by Izumi Hasegawa/Cinema Navigator


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