TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)
サイエンスフィクション&コミック・コンベンション・レポート
5月6日LAダウンタウンにあるシュライン・ホールで、サイエンスフィクション&コミック・コンベンションが行われた。シュラインといえば、去年のアカデミー賞も行われた由緒正しきホールである。
入り口では、この夏公開予定の『メン・イン・ブラック2』(02)のポスターや新作映画のグッズを無料で配っている。中に入ると、広いホール内にたくさんのブースが立ち並んでいた。ただ、ブース案内がないので、お目当てのブースがどこにあるのかは入場者が自分の足で探すしかない。
シュライン・ホール
それにしても、色々なブースがあるものだ。アメリカン・コミックはもちろん、仮面ライダーやガンダム、レイアースなどの日本のアニメやヒーロー物まで豊富に揃っている。なかでもアメリカで特に人気のあるジャパン・アニメは『カウボーイビバップ』シリーズだそうだ。確かに、西部劇とSFをミックスさせジャズ・ミュージックでクールに味付けした『カウボーイビップ』シリーズはアメリカ人好みだろう。ジャパン・アニメの発想の面白さには相変わらず感心させられる。
そんな事を考えながらウロウロしていると、黒山の人だかりが出来ているブースに出くわした。香港や中国のアクションDVDを扱うブースである。どうやら、皆何かを見ているらしい。僕もその人だかりを掻き分け前に出た。
そこにはモニターがあり、香港映画らしきものを流していた。その映画を見るなり僕は興奮した。なんと、その映画こそ香港で歴史的な大ヒットを記録し、日本でも6月より大々的に公開される『少林サッカー』(01)だったのだ。今年行われたアメリカン・フィルム・マーケットなどでも話題になっていた作品だけに、楽しみにしていたのだ。
会場にはブースがいっぱい
モニターに釘付けになっている僕に、近くにいたアメリカ人男性が声をかけてきた。「この映画、すげ-良いぜ!俺も今DVD買ったとこだよ」。僕の脳裏に?マークが浮かんだ。「DVDを買った?」ふと、見ると目の前にこの映画のDVDが山積みにされているではないか!まだ、アメリカでは公開されていないはずなのに…。
しかし、見たところ海賊版ではなさそうだ。というと、香港からの輸入ものなのか?もちろん、日本語は入っていないが、英語字幕はついているらしい。僕はほぼ衝動的に購入してしまった。日本には当分帰らない、かといってアメリカでの公開も未定だったので半ば諦めていた『少林サッカー』を思わぬところで手に入れることができ、意気揚揚と奥へと進んだ。
すると、今度は人だかりではなく長蛇の列が。列の先端を見ると、誰かが一生懸命サインしている。どう見ても、俳優ではない。サインをもらったお客に「誰のサインをもらったの?」と尋ねてみた。すると「これの監督だよ」とウェズリー・スナイプス主演『ブレイド2』(02)のポスターを見せられた。
ということは、サインをしていたのは『ミミック』('97)などを作った鬼才ギレルモ・デル・トロ監督なのか!? あまりに普通のおっさんなので、感激するよりなんだか拍子抜けしてしまった。
所狭しと作品が並ぶ
しかしこの直後、突如、背後で轟音がこだましたのだ。振り返ると、特設ステージの脇に設置された巨大にスクリーンに『スパイダーマン』(02)が映し出された。そして、登場したのがこの映画のサム・ライミ監督である。ライミ監督は『死霊のはらわた』('83)や『シンプル・プラン』('98)などのサスペンス性の高い作品から得る印象とは違い、優しそうな人物。関係者の間でもライミ監督の人の良さは有名らしい。
ちょうどライミ監督に質問する機会に恵まれたので、「日本では10年以上前に実写『スパイダーマン』をTVで放映していたのですが、ご存知ですか?」と訊いてみると、ライミ監督は目を丸くさせて「本当?知らなかったよ。僕この映画を製作するまでコミックすら読んだことすらなかったんだから」と答えてくれた。
単独インタビューを試みたが、ほとんど単なる立ち話程度のインタビューで申し訳ない。なにぶん、まさかライミ監督に直接お会いできるとは思っていなかったもので…。
サム・ライミ監督
昨今、ハリウッドではコミックの映画化やSFが流行らしく、このコンベンションも大盛況だった。『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)の公開も控えており、アメリカ映画おたく系市場は今後ますます盛り上がりそうだ。
TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本) 監修 フィーチャープレス
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