TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 ショートショート フィルムフェスティバル2002開催!

 5月14日、ハリウッドにあるエジプシャン・シアターにおいて、日本で生まれた映画祭“ショートショート フィルムフェスティバル”のお披露目が行われた。1999年に別所哲也やダグラス・ウィリアムズ氏が中心となって“アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル”としてスタートした短編映画のための映画祭だ。今年で4年目を向かえ、タイトルも新たにしたこのフィルムフェスティバルは、すでにシンガポールでも開催されるなど国際的な広がりを見せている。
 ほとんどがスタッフのボランティアで運営されているこの映画祭は、別所氏やスタッフの奮闘がベテラン監督達に若き日の情熱を思い起こさせるのか、ジョージ・ルーカスら大物が次々に応援の名乗りをあげ、若い頃撮った短編映画を提供してくれるなど益々の盛り上がり。昔のようにスタジオで助監督を経て監督になる時代が終わり、低予算の短編をきっかけにメジャー監督になる時代が到来した昨今、僕も含めたフィルムメーカーの卵達にとって、第一線で活躍する先輩監督達の学生時代の作品を見ることは、とても刺激的な経験だ。
会場のエジプシャン・シアター
 今年の上映会でも『ピアノ・レッスン』('93)のジェーン・カンピオン監督がUCLA時代に製作し、86年カンヌ映画祭、短編部門でグランプリを獲った『PEEL』('82)が上映された。現在活躍している監督が若い頃、特に学生時代に撮った作品と言うのは、その監督の個性や本音を端的に表していることが多いのでとても興味深い。

 短編映画というのは、予算の面から言ってもそれほど多くないため映像的にはシンプルだが、その反面ビジネス的なしがらみに囚われることなく、自分の本当にやりたいことを表現しているものが多い。ただ、あまりに監督が自分の世界を表現しようとするため、観客を置き去りにしている作品も少なくない。例えば『PEEL』は、オレンジの皮を父親の言いつけにそむいて車の外に投げたことがきっかけとなって起こる人間関係を描いた作品だが、僕にはサッパリ意味が分からなかった。
 今回のイベントでは、こういう文芸作品がある一方、ケネス・ブラナー主演のスリラー『Schneider's 2nd Stage』(00/英)や、ほのぼのとした感動を呼ぶCGアニメ『Light House Keeper』(01/韓)など、あらゆる国の様々なジャンルの作品がプログラムされ、一般の映画好きの観客にも受け入れやすいラインナップになっている。

 別所氏にインタビューしたところ「短編映画祭というのは、確かに抽象的な作品や実験的な作品が多く集まる傾向がある。しかし、僕らはそういう作品の他に、もっと娯楽性の高いものやメッセージ性の強い作品を掘り出して、皆さんにお届けしたい」と熱く語ってくれた。
別所哲也さん
 最後に「では僕の現在製作しているホラ-映画も出せますね」と聞いたら「なんだよ、それが聞きたかったのか(笑)」と軽くズッコケながら答えてくれた。別所氏はとても気さくな方だった。

 毎年、長蛇の列ができるほどの盛況振りを見せるこの映画祭。日本では6月14日から19日まで、例年どおりラフォーレ原宿で行われる。今年の目玉は、カンピオン監督作品か、それともケネス・ブラナー主演作か、はたまた未来のジョージ・ルーカスが新作で一気にメジャーへと駆け上がるか? 短編映画ならではの楽しみ方を体験できるでしょう。

 また過去に紹介された短編映画の数々を収録したDVD『アメリカン・ショート・ショート 2001スペシャルセレクション』が5月24日発売される。中にはジョージ・ルーカス監督作品やユアン・マクレガー主演の作品など、数々の賞に輝く話題作が多数収録されているらしい。これは必見かも!? 
 エジプシャン・シアターでの取材を終え、帰り際にふとチャイニーズ・シアターを見ると、次の日16日の深夜0時より公開となる『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)を見るために並ぶ人々の列が目に入った。“ショートショート フィルムフェスティバル”からも近い将来、こんな行列のできる映画を製作する監督が出現するんだろうなと思いつつ家路についた。まー、その監督が僕であることを密かに願っていたりもするのだが…。(笑)
■ショートショート フィルムフェスティバル公式サイト> http://www.shortshorts.org/top.html


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