TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 『バック・トゥー・ザ・フューチャー』シリーズ ついにDVDで発売!

 あの大ヒット映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』(以下『BTF』)シリーズ3作がついにDVDで発売されることになった。
 それにしても、こんな有名な作品が未だにDVDになっていなかったとは…。関係者の話によると、映画会社の権利問題で今まで発売に至っていなかったようだ。

 DVDといえば、本編を見る以外にも色々な“おまけ”がついてくるのが楽しみなメディアである。メイキング映像や、キャストやスタッフによる解説など、ファンにはたまらない内容だが、現段階では『BTF』のDVDにどんなおまけが収録されるかは未定。今回USCで行われた監督のロバート・ゼメキスと共同脚本とプロデューサー兼ねるロバート・ゲイルの質疑応答の模様はそのおまけの一つとして使われる予定だ。
ゼメキス監督
 ドキドキしながらUSCキャンパス内にあるノリス・シアターのドアをあけると、巨大スクリーンの前に『BTF』の生みの親であり、大先輩でもある二人のロバート(スピルバーグ風にいうと二人のボブ)がいた。小学生の時、『BTF』を見て即座にUSCへの留学を決意した僕である。人生の方向性を決定するきっかけともいうべき2人を間近に見て、めまいを感じるほどの感動を覚えた。
 全神経を集中させて彼らの言葉に耳を傾ける。このノリス・シアターは、普通の授業にも使われている。授業の時は大体10分ほどで意識がなくなってしまうのだが、今日は心構えが違う。2時間に及ぶ質疑応答に真剣に聞き入ってしまった。

 どの程度が収録されるのかは分からないが、日本でも今年中に発売される予定なので楽しみにしていてほしい。しかし、発売まで待てない読者のため特別にここでは一部、キャスティングについての面白い話をお伝えしよう。
ノリス・シアター
 ご存知の方も多いと思うが、『BTF』は当初エリック・ストルツで撮影が進められていた。しかし、ゼメキス監督はマーティーというキャラクターがエリックとうまく噛み合っていないと感じていた。ストルツの起用がミスマッチだと感じていたのは彼だけではなかった。一緒に脚本を書きあげたゲイルも同じ意見だった。二人は製作総指揮を勤めるスティーブン・スピルバーグに相談する。スティーブンは莫大な損失を承知の上で主演俳優の交代を許可した。
 この問題に関してゼメキス監督は「あれは完全に僕の間違いだ。あの事件によってエリックや皆に迷惑をかけた。実はもともとマイケル・J・フォックスをマーティーの役に考えていたんだ。しかし、当時マイケルはTVの仕事で忙し過ぎてね。それで変わりにエリックを起用したんだ。でも、あきらめきれなかったんだよ。」と語った。

 結局、ゼメキスとゲイルはマイケル・J・フォックスが出演するTV番組のプロデューサーと掛け合い、昼はTV、夜は『BTF』の撮影ということになった。マイケルがカメラの前に立った瞬間、そこにマーティー・マクフライというキャラに命が吹き込まれたのを感じたという。
ロバート・ゲイル
 それにしても、TVと『BTF』を行き交うマイケルのスケジュールは大変なものだったらしい。ゼメキス曰く「彼が若かったからできたんだね」という。

 その他、マーティーの父親ジョージ・マクフライを演じたクリスピン・グローヴァーは短気の上に感情的過ぎて泣いたり怒ったり大変だったなどと言っていた。そのせいか、グローヴァーはPART3にはほとんど出てこない。その反対に母親のローレンを演じたリー・トンプソンについては「プロデューサーや監督の宝だ。時間には正確だし、礼儀正しいし…」などとべた褒め。
 製作してから、かなり時間が経過している上、後輩たちとの和やかな雰囲気のなかで行われているためリラックスしていたせいか、かなり本音で2人とも語っていた。特にゼメキス監督などはステージに設置された少し背の高いディレクターズ・チェアーから、まるで子供のように足をブラブラさせながら楽しそうに答えていたのが印象的である。果たして、今日のこの質疑応答がどういう形でDVDに納められているのか楽しみである。


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