TEXT BY 庄司由美子
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第29回ステューデント・アカデミー・アワード授賞式
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なんだかこの1年、学生映画を見る機会が非常に多い。USC大学院時代は、制作専攻のクラスメート達の作品、そして現在のインターン先(サンダンス・インスティテュート)では、世界各国の多様な背景を持つ作品といったものだ。
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たまには、「おい、おい、勘弁してくれよー」といいたくなる作品もあるが、苦労の末に完成した、手垢のついていない斬新な作品を見ると、「ああ、なんとかして世に出してあげたい」という、親心というか、おねーさん心で一杯になる。
そんな学生達が一度は夢見る、第29回ステューデント・アカデミー・アワードの授賞式が6月9日(日)、アカデミー・モーション・ピクチャー・アーツ・アンド・サイエンス内のサミュエル・ゴールドウィン・シアターで開催された。この授賞式は一般にも公開されている。自分たちが受賞するわけでもないのに、友人達と私は気合をいれて着飾り会場に向かった。
会場は意外にも(?)超満員。真ん中に受賞者とその関係者、アカデミー会員や映画関係者、両端は一般客と仕切られていた。やはり、自分たちのライバルの作品を見ようとする映画学生が多い。一方で、単に学生映画に興味があるという中高年の方々もいて、映画ファンの層の厚さはさすがハリウッドと感心した。 |
スチューデントオスカーポスター |
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この賞には、毎年、全米各地の大学の映画学部、フィルムスクール及びアートスクールに在籍する学生から約300を超える応募があり、それをまず3つの地域で予備審査するのだそうだ。授賞式では、オルタナティブ、アニメーション、ナラティブ(物語)、ドキュメンタリーの4部門において、それぞれ、金賞(賞金5000ドル)、銀賞(賞金3000ドル)、銅賞(賞金2000ドル)が授与される。過去にスパイク・リー、ロバート・ゼメキスなども受賞している。
加えて、Honorary Foreign Film(名誉外国語映画賞)も発表される。またオルタナティブというのは、従来の物語的な映画の定義を超えた、実験的要素の強い映画を指す。こういうカテゴリーを設けること自体、伝統を重んじつつも変化していこうとするアカデミーの姿勢がうかがえる。授賞式の後、金賞の全作品と銀、銅賞作品の一部が上映された。
受賞者の顔ぶれを見て思ったのだが、ニューヨーク大学、UCLA、コロンビア大学、ノースウエスタン大学とやはり名門フィルムスクールからの受賞が多い。教育のレベルの高さを裏づけているようだ。残念なのは、我が母校USCからの受賞者がないこと。どーしたUSC?来年は名誉挽回せねば。 |
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オスカー像よりもちょっと小振りの スチューデントオスカー像 |
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特に印象に残ったのは2作品。まずは、ドキュメンタリー部門の金賞作品、『Moving House』(Dir: Pin Pin Tan/Northwestern Univ)。人口密度の最も多い国シンガポールで、ある華僑の大家族が、政府の命令で両親のお墓を掘り出し、その骨を「マンション型」墓地に「引越し」せざるを得なくなった様子を描いたもの。現世もあの世でもマンション暮らしを余儀なくされるシンガポール国民の皮肉な状況をつく鋭い視点が良い。
もう1つは、オルタナティブ部門の金賞作品、『For Our Man』(Dir: Kazuo Ohno/Columiba Univ.)。ある哲学者風な男が、夜1人で部屋にこもり、落書きをしながらストーリーを組み立てるという実にシンプルな設定なのだが、このシンプルなフレームワークの中に、様々な映像・ストーリー上の実験的要素を盛りこんでいる。いやー、はっきりいって度肝をぬかれた。私が無知なのかもしれないが、こんな才能ある方が日本からアメリカでがんばっているとは知らなかった。このように海外で学んだ人達が日本の映画界に新風を吹き込んでくれればいいなあと心から願う。
TEXT&PHOTO 庄司由美子 |
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