TEXT BY 深沢コウスケ 取材協力:伊藤秀隆 Planet Kids Entertainment

 映画留学生必読!初めてのプロデューサー日記 (前編)

 今回は、レギュラー執筆者の伊藤監督が製作している映画の現場を紹介しましょう。現場でプロデューサーを務める深沢君にレポートしてもらいます。
 今回、初めてプロデューサーという仕事を務めさせていただいた深沢です。納品期限直前ということもあって伊藤監督は隣の部屋で、不眠不休で編集している為(厳密に言えば編集を監督しているんだけど…)、僕が代わりにレポートする。ん?なんかイビキが聞こえるけど???気のせい気のせい?

 まず僕らが製作中の本映画についてお話しておこう。この映画はインターネットコンテンツ用にZAQという大阪の企業がスポンサーとなり制作した3本の短編ホラー映画。
演出中の伊藤監督
 映画制作者を志して渡米してから約10ヶ月、そろそろ何かを製作したいと焦っていた。そんな時、伊藤監督のホームページでスタッフを募集しているのを知り、すぐにメールを出した。僕が惚れ込んだのは伊藤監督の映画制作の仕方だ。彼は、単に金がないというのもあるのだろうが渡米してからというもの、自費をまったく使わずに映画を製作している。それこそ、学校にクラブを設立して予算を引き出したり、映画クルーを使ってキャンパス内でカレーを売ったりなど、彼の映画制作は脚本の次に、学生映画では珍しく「資金集め」をするのだ。
 僕は常々「プロを目指すためには資金集めから始めないと意味がない」と考えている。なぜなら、自費で製作した場合、様々な面で甘えがでてくるからだ。伊藤監督は、どうやったら資金が調達できるかを具体的に提示してくれる。そのプロフェッショナルな姿勢にとても興味を持ったのだ。

 さて、今回僕はプロデューサーという大役を任されることになった。プロデューサーの仕事は大きく分けて2つある。一つは先にも書いた資金集め、そして、もう一つが資金管理、つまり集めた資金をどううまく使うか、である。今回は伊藤監督がすでに資金を集めてきているので、その資金をいかに使うかがメインの仕事になる。
スタッフ総勢30名の大所帯
 具体的には、大まかな機材のレンタルの値段交渉から始まり、ロケ地探し、予算管理、編集の立会いといった感じだ。ハリウッドは基本的に学生映画(今回の場合、スポンサーがついているので本当は違うけどね)を応援しようという風潮が強いので、交渉次第では値段はかなり安くなる。ハリウッドという街が、学生映画を育てることを一つの目的としているのだ。

 さて、こうして撮影が始まると、プロデューサーの役割は一応終わりである。ただし、それは問題が何も起こらなかった場合だ。しかし実際は、問題のない撮影現場などはあり得ない。撮影現場は、言ってみれば戦場のようなもの。信じられないようなトラブルが続くのが当たり前なのだ。撮影に使用していた車のキーが突然なくなったり、撮影への苦情がきたり、役者がドタキャンしたり…。
 プロデューサーは、こういった事態を早急に解決し、撮影をすばやく再開、又は止めさせないようにしなくてならない。また、一度、決まっていたロケ地が急に使えなくなり、新しい場所を探し、頼み込んで撮影3分前に許可がおりたという事もしばしば。本当に一瞬先は闇って言葉を実感した。

 監督というのは、芸術面の全責任を負う。そして、プロデューサーは、その製作全ての責任者になる。監督は、自分の納得がいく絵が撮れるまでテイクを重ねるのが仕事であり、一方、資金を管理するプロデューサーは、どこかで見切りをつけて監督にストップをかけるのも一つの重要な仕事になる。
気合を入れて撮影スタート!
 素晴らしいものを作りたいという思いは監督と同じなのだが、撮影の遅れからくる皆のスケジュール・製作予算管理など様々なマイナス要素を考え、ともすれば長引きがちな撮影を切り上げさせるがプロデューサーの重要な役割なのだ。伊藤監督の大胆かつ、的を射たアイディアが次々と出てくるので、プロデューサーとしての対処はキツイところもあったが、個人的にはとてもいい経験になった。

次回は撮影現場でのお話をさせていただきます。


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