TEXT BY フィーチャープレス 岩下慶一

 ダウンタウンの撮影スポット/映画に登場する建造物特集

 今やアメリカの主要な輸出品である映画の生産工場、ロサンゼルス。映画産業からの収入は莫大なもので、市ぐるみで映画を支援する態勢が出来上がっている。言ってみれば街全体が大きなセットみたいなものなのだ。ロサンゼルスには、「あ、この景色なんかの映画で見たぞ」という所が山ほどある。そんな中でも映画製作者たちのお気に入りスポットともいうべき場所があり、いろんな映画に繰り返し登場している。今回はそんな隠れた映画スポットをご紹介。
 ロサンゼルスの高層ビル群の風景が登場する映画は、もう数え切れないくらい存在する。ロサンゼルスが舞台になっている映画は、大抵ダウンタウンのロングショットを使っているから、来た事がなくてもLAだと分かる人も結構多いのではないだろうか。一番高いビルがライブラリータワーと呼ばれるビル。『インデペンデンス・デイ』('96)でエイリアンに襲撃されたビルだ。その他、最近の映画では、ヴィン・ディーゼルをスターに押し上げた『ワイルド・スピード』(01)にも繰り返し登場する。
ロサンゼルスの高層ビル群。
一番高いのがライブラリービルディング。
 ダウンタウンの中にあるウェスティン・ボナベンチャーホテルは、その未来的な外観からか、映画関係者の間で非常に人気が高く、色々な映画に登場している。『ストレンジ・デイズ』('95)『リーサル・ウェポン2/炎の約束 』('89)『ヒート』('95)『ニック・オブ・タイム』('95)など数え上げたら切りがない。
 『シークレット・サービス』('93)では、ビルの中のガラス張りエレベーターがイーストウッドと犯人の対決シーンに使われている。『トゥルーライズ』('94)でもシュワちゃんがこのエレベーターでテロリストを追跡する。ハリウッド映画でもっとも使われたエレベーターだ。

 エレベーターの横には、『トゥルーライズ』撮影記念の銅版が埋め込まれている。最近では、デ・ニーロとエディー・マーフィーのポリスコメディー、『ショウタイム』(02)にも登場した。ただし、ビルの中のシーンは別の場所で撮影されていたけれど。
ウェスティング・ボナベンチャーホテル。

数々の映画に登場した。
 また、もはや伝説になってしまった映画『ブレードランナー』('82)で、エンジニアのセバスチャンが住んでいたビルが、ブラッドベリ・ビルディング。19世紀の建築で非常に美しいデザインだ。ここも映画関係者の人気が高い撮影スポットだ。

 映画の中では、おどろおどろしい雰囲気を醸し出していた建物だったが、うっかりすると見過ごしてしまうほど一件何の変哲もないビル。照明とカメラのセッティングでこうも印象が変わるものか、と思ってしまう。これも映画のマジックである。『ブレードランナー』の他にも、『ウルフ』('94)でジャック・ニコルソンが勤めていた会社としても登場した。テレビドラマの撮影にも良く使われている。
ブラッドベリ・ビルディング。1893年の建築。
 そしてダウンタウンのセカンドストリートにある、これまた何の変哲もないトンネル。しかし、これこそは過去30年、あらゆる映画やテレビ、コマーシャルの撮影に使われてきた世界でもっとも有名なトンネルなのだ。

 『ターミネ-ター』('84)『デモリションマン』('93)『ガタカ』('97)など、ハリウッド映画に登場するトンネルのシーンの殆どは、このトンネルで撮られている。メジャー作品だけでも50本以上がここを使っているのではないだろうか。最近では『チャーリーズ・エンジェル』(00)で、カーアクションのシーンに使われていた。
セカンドストリートトンネル。
ハリウッド御用達のトンネルだ。
 それにしても何故このトンネルばかり使われるのか?その秘密はトンネルの壁面が光沢のあるタイルで覆われているから。照明をあてた時、光がタイルに美しく反射するのだ。大きなレフ版(光を反射させる鏡のような板)を持ってこなくても、トンネルが自然に美しい照明効果を作り出してくれるというわけだ。その他、上下で4車線という広い道幅、撮影にぴったりの長さ等、まるで映画撮影の為につくられたようなトンネル。

 アカデミー賞に建物部門があったとしたら、ボナベンチャーホテルか、セカンドストリートトンネルのどちらかが受賞する事は間違いない。ロサンゼルスでもっとも頻繁に撮影が行われている場所の一つで、週一ペースで何かしらロケが行われている。ロサンゼルスに来て映画の撮影が見たければここをチェックしてみるのも良いかもしれない。ただし撮影は夜が殆ど。


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