TEXT BY 坂本マリ

 R・スコット監督、N・ケイジ主演の新作を空港で撮影!?ロケ現場潜入ルポ!

 ロスアンジェルス市内から南へフリーウエイ5番を走らせる事30分(渋滞がなければ)アナハイムという街がある。日本の皆様にはディズニーランドがあるということでも知られているが、最近は日本人選手の活躍ぶりがめざましい大リーグ球場アナハイム・スタジアムある所だ。野球ファンでないあなたでも長谷川選手の所属していた、アナハイム・エンジェルスという名前に聞き覚えがあるだろう。今回はハリウッドから遠く離れた街、アナハイムのコンベンンション・センターで行われた映画撮影をレポートする。
 7月某日、朝5時半、(映画の撮影はたいてい早朝から)ここ、アナハイム・コンベンション・センターに400台の車が向かう。今日出演するエキストラと撮影関係者の車である。セキュリティー・チェックもなく(前回の記事に述べたが通常スタジオに入るのに厳重なセキュリティー・チェックを受ける)サインに従ってセットへと急ぐ。

 今回のセットはこのコンベンション・センターの通路の一部。セットを横切り、扉を開けると、だだっぴろい展示会場におよそ300人のエキストラが待機その横を機材をのせたトラック、衣装やヘアメイクさんのトレイラーが並んでいる。それに朝食用のケータリング・トラックにテーブル。これだけの物や人が居てもまだまだスペースは余裕がある。と言えばどれだけの広さかはお分かり頂けるだろう。
偽物の離発着掲示板。裏側はなにもない。
 およそ300人のエキストラのほとんどはカジュアルな格好をしているが、着替用のテントからでてくる人達は、皆制服に身をつつんでいる。パイロット、スチュワーデス、セキュリティー、空港のバーのカクテル・ウエイトレスまでいる。ちなみに制服は架空の航空会社のもの。どうやら、どこかにある空港のシーンの撮影のようだ。では、何故ここコンベンション・センターなのだろう、と通路のセットへ出てみると、ライトなどの機材の他に、離発着掲示板やその他の細かい表示、装飾などが1キロ四方の間でロスアンジェルス空港と同じになっている。天井も高く広い館内のコンベンションセンターの通路は、すっかり空港のターミナルと化している。
 ロスアンジェルスから北へ行った所の、サンフェルナンドという街に(メキシコ移民の人たちが多く住む所)ハリウッド・エアポートというスタジオがあり、その名の通り空港ターミナルのセットがある。滑走路まではないのだが、飛行機が一機あり、機内の撮影はここでよく行われる。何故今回このスタジオを使わなかったのか?という疑問はさておきカメラの側へ近づいていくと、突如、葉巻きの匂いにむせた。カリフォルニアの法律では建物の中での喫煙は一切禁止されているのだが、一体、どこのふとどきものかと振り向くと?それは、昨年グラディエーターでアカデミー賞を総なめした巨匠リドリー・スコット監督であった。
右上に写っているのは、風船に包まれたライト。
 本日クランクインのこの映画のタイトルは『マッチスティック・メン(原)』。気になる主演は、演技には定評のあるニコラス・ケイジとチャーリーズ・エンジェルで、ドリュ-・バリュモアをだました依頼人、サム・ロックウェルの2人、役柄は2人とも詐欺師ということらしい。個人的にはニコラス・ケイジの悪役は好きなので楽しみである。
 空港でのシーンなので不謹慎にもテロ行為などのアクション・シーンを期待したのだがアクション・シーンは2日間の撮影の中では一切なかった。2日間のうち撮影されたのはわずか3シーン。コンベンション・センターの外にタクシーや空港用シャトルが駐車され、扉の脇にはユナイテッド航空などの航空会社のサインが取り付けられた。

 乗客やスチュワーデス役のエキストラの他に、ベルキャプテン役のエキストラが空のスーツケースを運んだりする演技の指示をうけコンベンション・センターの玄関も空港にはやがわり。ニコラス・ケイジが空港に着いて中に入って行くという、たった15秒間くらいのシーンが撮影された。このシーンだけでセッティングを含めておよそ、2時間かかった。
本番直前のニコラス・ケイジ 
後ろ姿だけでも彼だとすぐわかる。
 ニコラス・ケイジはエキストラの子ども達には愛想よく手を振ったり話し掛けたりもしていたが、大人のエキストラには、目も合わそうとしなかった。ほとんどの大物俳優は、会話をしないまでも、とても気さくに挨拶をしてくれるので、ちょっとがっかりだった。もしかしたら究極の恥ずかしがり屋なのかもしれない。サム・ロックウエルの方は愛想がよく「ハイ!」と声をかけてくれた。柄のシャツをきてサングラスをした彼はほんとうに詐欺の役がお似合いである。

 公開は全米でも未定であるが、日本でこの映画を見た際には空港のシーンに是非ご注目下さい。


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