TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 インターネットで映画を見よう!

 日本でもブロードバンドはかなり浸透しているようですが、皆さんすでにお使いだろうか?ブロードバンドとはADSLやDSL、それにケーブルや光ファイバーといった電話回線より多くのデータ―を流す事の出来る線を使って、インターネットを使用することだ。これによって何が変わるかと言うと、インターネット使用時にいちいちダイヤルして接続する必要がなく、コンピューターを起動と同時にネットに接続されるほか、次のWEBサイトにジャンプする時の待ち時間がほとんど無くなる。また映画やTVなどの大きなデータの転送が必要となる動画も見ることが出来るようになるのだ。
 ただ、今の段階だとまだ長編映画を見るには、画面のサイズが小さくて見づらいなどの問題が結構ある。そこで、注目されているのが短編映画。だいたい、30秒から15分くらいの映画なので、多少見づらくても十分に楽しめる。それに制作側としても、予算がそれほど多くない代わりに制約も少ないので、実験的な映画が制作できる。だから商業映画とは違った、一癖も二癖もある映画が生み出されることができるのである。
 ハリウッドではすでにIFIMやAtoms Film、Always Iなど多くの短編映画サイトがある。そして、新たなる才能を発掘しようとメジャースタジオのスカウトマンが、これらのサイトを随時チェックしているようだ。

 実際、IFILMにある『405』という、高速道路に突如ジャンボジェット機が不時着するというCGを使った2分ちょっとの映画は、ジョージ・ルーカス監督に興味をもたれ次回作への出資を受けた。この作品は確かに必見。CGエンジニアが家庭用のPCと60万ほどの予算で製作したらしいが、上記のifilmのサイトで見る事が出来るので是非見て欲しい。そのクオリティーに驚く事請け合いだ。
ifilm.comでブレイクした『405』は今や一般に市販されている。アメリカのAmazon.comで購入できる。
映像クリエイターにはメイキング映像ははかなりお勧め。
 また、『恋に落ちたジョージ・ルーカス』(01)という『恋に落ちたシェークスピア』('98) のパロディーも、短編映画にも関わらずインターネットでの公開を通してビデオが飛ぶように売れ、日本でもギャガが配給権を獲得している。これはUSC(南カリフォルニア大学)の卒業生が、自分のおばあさんに出資してもらい制作した作品で、USC時代のルーカスが『スター・ウォーズ』('77)の構想を練りながら恋愛をするというストーリーだ。もちろん、後輩の制作したこの作品にかなり気を良くしたジョージ・ルーカスが新しいプロジェクとの話し持ちかけたとか…。
おばあちゃんに出資してもらったというのが、
なんだか良いよね。
 このように、短編映画を製作してメジャーデビューへのきっかけにしたり、インターネットを使って販売しその制作費を回収したりと、ここ数年で登場した新たなるツールを利用しチャンス掴もうとする映像クリエイターが続々と出現している。

 最近でもスピルバーグ監督が、学生の「映画監督になるにはどうしたらよいか?」という質問に対し、「短編映画を製作し、映画祭出品の他、有名サイトで公開するのが有効」と答えている。日本でも、たった一人で20分ほどのアニメーションを制作してしまった新海真氏の『ほしのこえ』がインターネット上で公開され、DVDが飛ぶように売れ、現在アメリカにまで渡って来ているという情報がある。
 かく言う僕自身も、この2ヶ月間あるインターネットプロバイダー企業がスポンサーについた短編ホラー映画を3本製作していたのだ。その昔、映画監督や映像クリエイターになろうと思ったらスタジオに入り助監督や何らかのアシスタントから始めなければならならなかったが、若手を育成する余裕がスタジオになくなってしまった現在、こういった様々なチャンスをいかに利用して自分の才能を世に知らしめていくかが成功への鍵になってきている。

 言ってしまえば、映像クリエイターの「発表する場がない」という言い訳は通用しない世の中になってきたのだ。映画制作者を目指す方、また次世代の映画制作者のデビュー作を目の当たりにしたい方、是非インターネットで短編映画をご覧下さい。きっと、あなたのお好みの作品に出会えるはずだ!
■IFIM> http://www.ifilm.com/
■Atoms Film> http://atomfilms.shockwave.com/af/home/


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