TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 冬休み映画合戦 後半期
 スターが続々監督業に進出!?

 1月になりアメリカの冬休みシーズンもそろそろ終わり。ハリウッドの冬休み映画合戦はフタを空けてみれば、大体予想通りの結果だった。今回は、その結果報告と、現在、注目されている俳優が監督にチャレンジして注目されている作品をご紹介しよう。
 まず大体予想通りの結果として、『ハリーポッターと秘密の部屋』『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 』が興行収入2億ドルを突破し『007/ダイ・アナザー・デイ』 『サンタクロース・リターンズ! クリスマス危機一髪』(02)もそれぞれ1億ドルを突破した。ハリウッドのシリーズもの流行はこれからも続いていきそうな結果だ。

 以前レオナルド・ディカプリオを主演にしたスピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』とスコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』がこの冬公開されるというニュースをお伝えしたが、その結果をお知らせしよう。

 公開日が同時重なるのでは、と心配された両作品だが、12月20日に『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』、27日に『ギャング・オブ・ニューヨーク』がに公開され、直接対決ということにはならなかった。
『コンフェッション』ポスター
 興行の結果を見てみると、スピルバーグ作品の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が僅差で勝ってはいるものの、両者ともそれほど華々しい興行収入は得られていないようだ。特に『ギャング・オブ・ニューヨーク』は初登場2位、2週目から5位に転落と振るわず、制作費の回収すら危うい状況となっている。

 両者とも2時間半を超える大作になってしまったのが敗因だろうか?いや、2時間59分の『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 』が健闘しているところを見るとそうでもないらしい。個人的な感想を述べると、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』はたしかに面白いが、スピルバーグらしさを望むファンには期待はずれの内容。また、『ギャング・オブ・ニューヨーク』に到っては、一体どうしたんだマーティン・スコセッシ監督?と疑問をもってしまうような作品になっている。劇場でも耳を澄ますと観客のイビキが聞こえてくるほど。昨年公開予定だったのに1年も公開が遅れた事といい、作品の質といい、果たして裏で何が起こったのかそちらのほうが気になる作品だ。
 ここまでは、どちらかというと子供から大人までを対象とした、いかにも冬休み映画という感じの作品に関する報告だが、これから春にかけてはアカデミー賞狙いの秀作やアート性を感じさせるような作品が公開される。その中で今年はなぜか、スター達が監督した作品が多い。
 まずはデンゼル・ワシントン監督作品『アントワン・フィッシャー(原)』。この作品はワシントン本人も出演している。物語は、キレやすい性格の海軍兵が軍の精神科医に会って治療を受けていくうちに、自分の父親との関係に深い傷があることを知っていくというもの。次は、二コラス・ケイジ監督作品『Sonny』。こちらも軍人を扱ったお話で、兵役を終えて違う人生を歩もうとしている元ジゴロのソニーが主人公。本人は端役で出演している。

 そして最後は、ジョージ・クルーニー監督作品『コンフェッション』。TVの有名司会者でプロデューサーのチャック・バリスが、自分は元CIAの殺し屋だったと告白した衝撃的な同名自伝小説の映画化だ。主演は、ドリュ―・バリモア、ジュリア・ロバーツ、サム・ロックウェルの他、ジョージ・クルーニー自身も出演。日本では2003年8月下旬にロードショーが決定している。
『アントワン・フィッシャー(原)』ポスター
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