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TEXT BY 伊藤秀隆(監督／プロデュース／脚本)

　楽しみの一つか？揚げ足をとってるだけか？　発見しよう映画の間違い！

　本年度、最優秀アカデミー賞を受賞した『シカゴ』。日本ではいよいよ４月19日に公開される。僕の感想を言わせて貰えば、「素晴らしい」の一言。しかし、そんな傑作にも14箇所のミステイクがあるのだ。

　例をあげると、主人公ロキシーが護送車でコック郡の拘置所に護送される場面。ここで、検事が自分のことを“District Attorney(地方検事)”と呼ぶ。しかし、イリノイ州の検事は“State's attorneys(州検事)”と呼ばれ、地方検事は存在しない。モーリーン・ワトキンズ氏によるオリジナルの舞台では正確に書かれているため、脚色時のミスだと思われる。

　そんなのどうでもいいじゃないか！　と僕などは思ってしまうし、多くの読者の皆さんも同じように感じるかもしれない。しかし、最近の米国の映画オタクの間では、こういった重箱の隅をつつくようなミス探しが流行っている。まあ、実際僕自身も雑誌に載っている「間違い探し」は好きだし、２度目、３度目に映画を見たときにこういったミス探しをやってみると結構はまるものなのかもしれない。

　ただ、『シカゴ』の14箇所というのはかなり優秀なほうである。アクションやSF映画になると100以上のミスが余裕で見つかるらしい。そして、このようなミスをまとめて集計しているのが「ムービーミステイクス・ドット・コム」である。

　今米国でかなりホットなサイト。驚く事に運営しているのは個人の映画ファン。イギリスに住む、今年26歳のジョン・サンディーさんがその人だ。しかも、彼はここに集まった情報を本にしてしまったのだから凄い。

　このサイトは左側にAlta Visataが提供する翻訳システムがついているため『スパイダーマン』が『くも人』と直訳されているなど、少し変だが日本語でも閲覧できる。

　ここで、ミスの多い映画トップ５をお伝えしよう。

１位：『ロード・オブ・ザ・リング』…… 183個所
２位：『マトリックス』…… 177箇所
３位：『タイタニック』…… 164箇所
４位：『スパイダーマン』…… 157箇所
５位：『ハリー・ポッターと賢者の石』…… 149箇所

　映画製作時にはスクリプターという、コンテニュイティー(衣装のズレや、メイク、動きの形など前のショットと同じになっているかどうか)をしっかり記録するプロがつくのだが、それでも間違えるというのは映画製作の複雑さ、特にCGなどの特撮を使用することの難しさを表していると思う。聞くところによると、『スパイダーマン』はコンティニュイティーを確実にするために、2000人のエキストラを必要とするシーンを５回も撮影しなおしたと言う。その辺、さすがは金のかかったハリウッド映画という感じだ。

　面白かったのは、『タイタニック』で、救命ボートに乗っている人がデジタル時計をしている。なぜ、1912年にそんなものがあるの？という指摘。タイタニック内部の構造や食器に到るまで、完璧に当時のタイタニックを再現し、完全主義者と呼ばれたジェームズ・キャメロン監督もこれではたまらない思いだろう。映画の作り手としてはあまり歓迎したくない風潮だが、映画ファンとしては興味の尽きない部分だろう。ちなみに、僕の映画は性格が大雑把なせいか、短編でもかなりミスが多くスクリプター泣かせと呼ばれている。

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