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TEXT BY 伊藤秀隆(監督／プロデュース／脚本)

　ハリウッドカフェめぐり　パート２

　その昔、アメリカで飲むコーヒーと言えば味の薄い低級品というイメージが強かった。日本でも、アメリカンと言うと薄めのコーヒーが出てきたものだ。しかし、1970年代後半からイタリアなどで飲めるような香りの強い濃い目のコーヒーを出すカフェがシカゴやサンフランシスコなどアメリカのあちらこちらから出現し始めた。

　1980年代に入り、スターバックスやコーヒービーンズといった高級コーヒーを手軽に飲めるチェーン店が一気に広がり、小さなお店もこれに対抗して、独自の手法を導入したコーヒーを入れたり店の雰囲気に凝ってみたりと様々な努力を始めた。今や、お気に入りのカフェを知っていることがアメリカ人の間で一種のオシャレというかステータスになっている。そして、もちろん流行のオピニオンリーダーであるハリウッドスター達もいい雰囲気のカフェに集まってくる。

　ということで、ハリウッドカフェめぐりパート２をお送りしよう。まず、ご紹介するのはサンタモニカにある「INTERACTIVE CAFE」(215 Broadway Santa Monica CA)。ブロードウエィ通りに面した場所にあるガラス張りのカフェの中には様々な種類の家具が置いてあり、大きなソファーでくつろいだり、どっしりとした机に向かって読書や勉強することができる。また、少しまえまでは「Inetaractive Caffe」の名前のとおりインターネットが置いてあったのだが、現在はファッションから映画、音楽など色々な種類の雑誌が置かれている。

　このカフェにはアル・パチーノが家族を連れてよく訪れる。しばらく通い詰めてみれば車椅子に乗った白髪の父親と息子と共に団欒するパチーノを見ることができるかも。

Intractive Cafe:ゆったり、ソファーは思わず寝てしまいそう…。ここはサンドイッチもなかなか美味しい。

　続いて、古着屋がたくさん建ち並び、日本からもバイヤーが集まってくるメルローズにある「Urth Caffe」(8565 Melrose Ave West Hollywood)。いつも混んでいるのでゆったりした雰囲気を味わいたい方にはお薦めできないが、アメリカの流行や文化を満喫したい方にはこれほどお薦めのカフェはない。

　このカフェを訪れるのは映画のプロデューサー、ファッションデザイナー、ミュージシャンなど、いわゆるギョーカイの人々。少し聞き耳を立ててみると皆面白い話をしている(悪趣味？)。『フリーダ』で今年のアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされていたサルマ・ハエックも以前ここで打ち合わせをしていた。

Urth Caffe:買い物して楽しくおしゃべりしたいときにはここは最適！

　そして、最後にご紹介するのがスターの集まるカフェとして知る人ぞ知る「Mani's Bakery」(519 S. Fairfax Avenue, Los Angeles, CA.)。今まで紹介してきたカフェは、雰囲気もよく個性的で本当に一度は訪れて欲しいと思う場所だが、この「Mani's Bakery」は店内も狭く、装飾も結構殺風景。なんでここにスターが？　と思うかもしれない。このお店を訪れるスター達は、ダニー・デビート、シャロン・ストーン、ヘレン・ハント、ジョディ・フォスター、ウディ・ハレルソン、ティム・バートン、ジェミー・リー・カーティスなどの数え挙げたら切りがない。

　ここは店名のどおりパン屋で、おいしいパンがうりものなのだが、それでもこれだけのセレブがなぜここに？と思わずにはいられない。そんな疑問を「Mani's Bakery」の店員にぶつけると、とっておきのうらばなしをしてくれた。

Mani's Bakery:ねっ？けっこう殺風景でしょ…。でも、スターに会える確率はここが一番高い！

　1991年に製作された映画『アザー・ピープルズ・マネー』でダニー・デビートがドーナッツを貪り食うシーンがあった。しかし、デビートは頑固な自然食ファンで、ジャンクフードは食べない主義。普通のドーナッツは絶対にイヤだと譲らず、元マイケル・ジャクソンの個人シェフを勤めたこともある「Mani's Bakery」のシェフに特注のドーナッツを注文した。「砂糖なし、脂肪分なし、乳製品を使わない、しかもそれを油で揚げないドーナッツを作ってみろ」と。

　シェフはこの無理難題に見事答え、ドーナッツに似た"faux-nut."という物を作り上げた。これに感動したデビートはハリウッドの映画業界のみならず世界中にこのドーナッツを宣伝した。そのおかげで「Mani's Bakery」は一気に大人気店になってしまったのだ。

　ここで人気なのは低脂肪(無脂肪ではない)、無糖のマフィンやパイである。やはり、食事に最も気を使うスターが一番欲しいのは「食べても太らない食べ物」のようだ。

＊ハリウッドの街でスターハンティングはとても楽しいが、一つだけ気をつけて欲しい事がある。もしスターに遭遇しても、声をかけたりするのは止めておこう。プライベートの時間を楽しんでいるスターはそっとしておいてあげるのがマナー。また、これらの店は大抵ストロボを焚くのは禁止。たとえOKでも店内の写真をバチバチ撮るのはNG。日本人はマナーが良いね、と思われたいものだ。

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