TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 ハリウッドを観光しよう その4 食べ歩き編―ハリウッドのアジな店

 今はどうか知らないが、僕が留学した頃、すなわち今から6年前は「アメリカは、うまいものがない」というのが通説だった。皆からアメリカではハンバーガーばかりの食生活になるぞ、なんて言われて、覚悟して渡米したものだった。しかし、今思うとあれもステレオタイプの偏見の一つだった。確かに、アメリカの内陸部は肉とジャガイモが中心の食生活らしい(その地域に住んでいないので確かな事は言えない)。だが、少なくとも、ここ西海岸では「ハンバーガーばかり」なんていうのはジョークにもならない。レストランなどを見ても、アメリカの食生活は日本よりはるかにバラエティーに富んでいる。僕の友人などは、日本の食事の方がワンパターンでつまらない、とまで言い切っている。
 アメリカには数多くのアジアンフードがある。タイ、ベトナム、中国、韓国、日本、台湾、インド、数え上げたらきりがない。東京にも多くのエスニックレストランがあるが、LAとの大きな違いは、日本にあるこれらのレストランが日本人の舌に合わせてアレンジされているのに対し、LAのレストランはこの地に移り住んだ移民向けに料理を供している点だ。当然味は本場そのもの。クセや刺激の強いものも数多くあるが、慣れてしまうと日本のエスニックレストランの料理なんかよりはるかにおいしい。
Canter’s :よく見ると年代を感じさせる建物だ。
 また、このお店を利用するスターも多く、古くはマリリン・モンロー、ケーリー・グラント、エルビス・プレスリーから、現在は二コラス・ケイジ、マドンナなどが常連である。さらに、トニー・スコット監督の『エネミー・オブ・アメリカ』のロケーションとしても使用され、ウィル・スミスやジーン・ハックマンもやってきた。ハリウッドはユダヤ人が中心となって築いた社会だということは、ご存知の方も多いと思う。そんなユダヤ人の日々の食生活に触れてみるのもいいかもしれない。
Canter’s :庶民の店って感じでしょ? ユダヤ料理はあまり食べる機会がないと思うので試してみよう!
 続いては、かなり有名なところなので恐縮だが、外すわけにはいかないチリドッグのお店「Pink’s」(709 N. La Brea Avenue, Hollywood, CA. / (323) 931-4223) 。先ほどご紹介したCanter'sからあまり離れていないメルローズ通り沿いにあるPink’sは、常に行列があるのですぐに分かる。特にランチタイムや深夜などは、チリドック1つに30分近く並ばなくていけないほどだ。しかし、それだけの価値はある。確かにうまいのだ。そして、日本ではまず味わえないようなボリュームだ。僕としては、チリドックよりダブルチーズ・ベーコン・チリバーガーをお勧めする。これにアボガドを入れるとさらにうまい! ハンバーガー好きなら是非一度は試していただきたい。30分並ぶ価値は絶対にある! 
さて、あなたは並んでまでここのハンバーガーを食べたいでしょうか?
 このお店はハリウッドスターの間でも評判のようで、ブルース・ウィリスが前妻デミ・ムーアにここでプロポーズしたのは有名な話。他にもジャック・ニコルソン、ジェリー・ルイス、マイケル・J・フォックスなど、Pink’s を訪れるスターを数え上げたら切りがない。アメリカでうまいハンバーガーが食べたいと思ったら、とりあえずこのお店に来てみてほしい。きっと満足してもらえるだろう。

 さあ、今回の「ハリウッドを観光しよう!」どうでしたか? 「アメリカは飯がまずい」なんていうのは大間違い。実際にあなたの舌で確かめてください。
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