TEXT BY 深澤耕輔(プロデューサー)

 ハリウッドで見つけた大穴大学!? USCだけが映画学部じゃない!

 これまでUSC、UCLA、AFIなど映画学部では全米トップ3に入る超有名校をご紹介してきたが、ハリウッドには、知名度が低いわりに素晴らしいカリキュラムを持った大学が数多く存在する。今回はそんな現地でしか知られていない映画学校を今回はご紹介しよう。
 あまり知られていない事だが、USCなどの有名大学は管理体制が強かったりする。例をあげれば、有名校としての体裁を気にするUSCは、少しでも危険が予測される作品の制作を禁止していて、チャンバラ映画を撮った友人は、学部長室に呼び出され、もう一度危険な撮影をした場合は退学だと警告された。今回ご紹介する学校は、そうした意味では自由度が高く、好きなように作品を作ることが出来る。
 まずは『ディープ・インパクト』('98)の監督、ミミ・レダー等を輩出した、ロサンゼルス・シティ・カレッジ(LACC)。短大レベルでは珍しい映画制作学部を持っている。即戦力育成に力を入れるこの大学では、在学中、生徒はとにかくたくさんの映画を撮ることになる。キャンパスを訪ねてみると、課題に追われる生徒達が8mmカメラを持って走り回っている姿が印象的であった。また、優秀な作品は学校所有の大きな劇場で公開されるなど、生徒のモチベーションを高めるシステムもしっかりしている。デジタル派であるUSCに比べ、フィルムを自分の手で切って編集するといったアナログ的なところも面白い。
LACCの小奇麗なキャンパス
 しかし、なんと言っても一番の魅力は、授業料が安いことだろう。有名校の授業料は年間300万ぐらいだが、LACCは50万円と破格の安さだ。

 次にご紹介するのは、コロンビア・カレッジ(CCH)。最初に言っておくが、サッチーや宇多田ヒカルで一躍有名になった方のコロンビア大学ではないので、お間違いなく。この大学の面白いところは、映画学部しかないところだ。Panavisionという最大手のフィルム用カメラ会社のあった場所を買い取り校舎としている。この学校も超実践派で知られている。生徒は様々な技術を学び、数多くの作品を作っていく。生徒の個人プロジェクトに対しても、無料で機材を貸し出してくれたり、学校内のスタジオを使わせてくれたりと、制作へのサポート体制は万全である。

 学校が小規模なため、教授と生徒の新密度が高いのも魅力の一つだろう。機材レンタル会社などへのコネクションが強く、レンタル時にかなりのディスカウントがきくらしい。ハリウッドの大穴的な大学だ。
 最後にご紹介するのは、UCLAエクステンション。UCLAが社会人向けに提供するプログラムだ。多くの生徒は20代後半から40代と様々。他では学べないユニークな講座をたくさん開講している。例えば、「インディペンデント制作における資金調達方法」、「ミュージックビデオの作り方」など、一つの題材を突き詰めて勉強することが出来る。ハリウッドといえども、エンタメ・ビジネスを学べる学校は少なく、映画ビジネス・コースは大人気だ。また、講師陣はスタジオ・エグゼクティブから『Xファイル』のプロダクション・デザイナー(美術のボス)と第一線で活躍している人たちが教えにやってくる。
UCLAキャンパスのマスコット、熊のブルーイン
 しかし、ここは大学でないため、学位は貰えないことに注意しよう!大学を出て、社会を経験した後で更なるキャリアアップを目指す方々にオススメだ。

 留学を目指す方々にとって、学校選びはとても骨の折れる作業。映画産業のどんな分野を学びたいのかによっても選択肢は異なる。実際、僕も悩み過ぎたため願書を出すのが遅れ、期限が過ぎてしまい出願出来なかったことがある。僕と同じ轍を踏まないためにも今回のコラムを書いてみたが、お役に立ったでしょうか?少しでも参考にしていただけたら幸いです。

取材協力:富樫真理子
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