TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 映画博士になろう!ハリウッドの博物館大特集

 エジソンが映画を発明してから100年余り。ハリウッドは85年以上の間、映画を製作し続けてきた。ベラ・ルゴシの『魔人ドラキュラ』('31)に登場する崖はどこ? マリリン・モンローのスカートがまくれ上がる、あの衣装はどこで見られる?エルビス・プレスリーって本当はどれくらいの大きい人だったの? などなど、映画ファンが本場ハリウッドに来たなら是非確かめてみたい事がたくさんあると思う。多分、そのほとんどの答えはこの街で見つかるだろう。しかし、どうやって? 今回は、そんな疑問を持つ映画ファンにお勧めの博物館を御紹介しよう!
 まず、トップバッターとして登場するのは、The Museum of Television & Radio(7021 Hollywood Boulevard, Hollywood, CA. / (323) 465-7900)。

 今から20年前にニューヨークにできたが、1996年にビバリーヒルズにもオープンした。ここでは、TVやラジオで放送された過去の名シーンが見られる。たとえば、アームストロングが月面に人類最初の一歩を踏み出した瞬間やTV版『逃亡者』の最終回、もしくは、ビートルズが『エド・サリバン・ショー』でデビューした時など、歴史的にも貴重な映像をボタン一つで見ることができるのだ。
The Museum of Television & Radio:かなり近代的なこの建物は、ロデオドライブから歩いていける場所にある
 この博物館には50のTVが用意してあり、来館者は各自TVの前に座りイヤフォンをつけて好きな番組を視聴できる。ここに集められている番組はTVが45000、ラジオが20000、CMが10000という豊富さである。あのロバート・レッドフォードも監督作『クイズ・ショウ』('94)のリサーチにもこの博物館を利用したらしい。

 続いては、Forrest Ackerman's Sc-Fi Mansion (2495 Glendower Avenue, Los Angeles (Hollywood Hills), CA. / (323) MOON-FAN)。 Forrest J. Ackermanは世界的にも有名なSi-Fi&ホラーのコレクターである。その彼が自らのコレクションを博物館として公開したのが始まりである。Ackerman氏は1920年より60年かけて約20万ものアイテムを集めたのだ。そのコレクションをグリフィスパークの近くにある自宅の18部屋に陳列した。そしていつの日か、Ackerman氏の自宅は"Ackermansion"と呼ばれ多くのSi―Fi&ホラーファンが集まるようになった。氏はホラー好きの間では有名な"Famous Monsters"の発行者としても知られる。
 また、マイケル・ジャクソンのミュージッククリップ「スリラー」にカメオ出演するなど、Si-Fiやホラーを語る上ではなくてはならない存在となっている。このようなわけで"Ackermansion"をプライベートに訪れるハリウッドの著名人も多い。『JAWS/ジョーズ』('75)のスティーヴン・スピルバーグ監督、『ミザリー』('90)や『ペット・セメタリ―』('89)の著者スティーヴン・キング、『ヘル・レイザー』のクライヴ・バーカー、『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー監督といった顔ぶれである。まさにハリウッドのSi-Fi&ホラー学校といった感じだ。
 最後にご紹介するのはRipley's Believe It or Not Museum(6780 Hollywood Boulevard Hollywood, CA. / (323) 466-6335)。

 チャイニーズ・シアターを見にハリウッドに行けば必ず目に付くのが、このRipley's Believe It or Not Museumの屋根に立ちはだかる、時計に噛み付いた恐竜の巨大オブジェである。中に入ると驚くのだが、この恐竜は上半身だけでなく下半身もしっかりあるのだ。ちなみに、この博物館は2つ目のもので、1つ目は、ハリウッド蝋人形館の近くにある。この2つはほとんど同じ内容なので片方だけ行けば十分だろう。
T-REX:ジュラシックパークの恐竜というには、少し可愛すぎ?
 この博物館はすべて映画関係というわけではない。確かに過去の映画で使われたものもあるが、コンセプトは創設者Robert Ripley が150カ国以上を旅してき集めてきた不思議なものが展示してある。もちろん、"Believe It or Not Museum"という博物館の名前からも分るように本物はほとんどない。例えば、二つの首をもつ牛、人間の干し首など胡散臭さ満載なのだ。しかし、その怪しい展示物の中にマリリン・モンローの衣装やジョン・ウェインの自画像などの本物アイテムも混じっているのだ。ただ、この博物館に真面目な気持ちで入る事は決してお勧めしない。馬鹿にした気分で訪れよう。それでも意外なアイテムに出会えるかもしれないところがこの博物館の面白さなのだ。。

 このように、ハリウッドには真面目なのから怪しいのまで様々な博物館が存在する。ただ、この博物館がどれだけ楽しめるかは訪れた方々の映画知識の量に比例してくるのだと思う。さあ、あなたはどの程度楽しめるだろうか?
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