TEXT BY 尾崎佳加

 ベスト or ワースト?? ゴールデングローブの栄華 or ラジーの激打!!

 読者の皆さんは昨年、いくつの映画をご覧になっただろう? 2003年は、SFからロマンスまでの全ジャンルで387本もの映画が公開されたが、その奮闘を称えられる作品はほんの一握りだ。

 LA時間の1月25日、ラベンダー色にライトアップされたビバリー・ヒルトンを囲む報道陣の中、今年は特に日本のプレスが目立っていた。こちらの日系俳優でなく、日本映画界で活躍する俳優では初めてのゴールデングローブ賞ノミニーとなった、渡辺謙をリポートするためである。

 NBCの中継を前に、張り詰めた気持ちで発表を待ったファンの方は多かっただろう。惜しくも今回受賞は逃したが、ハリウッド俳優たちを相手にたった一人のアジアン俳優として、渡辺は大健闘の雄姿を見せてくれた。今後はほかに、米俳優組合が主催のSAG賞アカデミー賞と2つも助演男優候補として名を上げられている。これは絶対見逃せない!
 さて、今年で第61回目となるゴールデングローブ、シリーズ完結編となる『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が、やはり4冠の最多受賞となった(作品部門、監督(ピーター・ジャクソン)、オリジナルスコア(ハワード・ショア)、オリジナルソング「イントゥー・ザ・ウェスト」)。東京を舞台に繰り広げられるシニカルコメディー、『ロスト・イン・トランスレーション』は、ミュージカル/コメディー作品賞に、哀愁漂う滑稽さを演じたらピカイチのビル・マーレイがコメディー主演男優賞を受賞。フランシス・フォード・コッポラという父親を持つプレッシャーを超えて優秀監督と評価され、最優秀脚本賞を手に入れたソフィア・コッポラが、その実力を見せつけた結果となった。
ビバリー・ヒルトン、正面エントランス。一見華やかな会場のウラは重々しい警備体制。
 ノミネート作品の紹介と、受賞者のプレゼンテーターは、賞ごとに入れ替わる。ショーン・ペンとティム・ロビンスで主演・助演の男優2冠をとった『ミスティック・リバー』のプレゼンターは、なんとティムの愛妻のスーザン・サランドンだった。2人のおしどり夫婦ぶりは業界でも有名だが、プレゼンテーターとしてのスーザンのコメントは、「ハンサムで才能溢れる人」。相変わらずのアツアツぶりを見せつけた。

 いつも宴会幹事のごとく場を盛り上げる真のエンターテイナー、ジム・キャリー、「フレンズ」のジェニファー・アニストンや、「セックス・イン・ザ・シティー」のサラ・ジェシカ・パーカーなどといった人気TV俳優から、ラストを飾ったレオナルド・ディカプリオまで、昨年スクリーンでの活躍がなかったスターも勢ぞろいとなった。いつも通りの笑顔を振り撒くスターたちだが、賞の発表の前に一瞬見せる緊張の表情。「オスカーの前哨戦」と言われるだけのことはある。
ビバリーヒルズのランドマーク、ビバリーヒルトン。ボールルームがGGの会場となる。
 まだまだ続く、メジャー授賞式シーズンの只中、このようなファンシーな授賞式だけでなく、ぜひチェックしてだきたい賞が一つある。

 米映画マニア(?)の中で密かな盛り上がりを見せているその賞は、皆さんもご存知だろう、ゴールデン・ラズベリー賞(Golden Raspberry Awards)だ。通称ラジー賞とも呼ばれるこの賞、ピープルズ・チョイスと同じく一般の人の投票で決められる民間の賞なのだが、これがいかにもアメリカらしくて面白い。称える神あればバッシングする神あり、つまりは"その年最もサイテーな映画"を決めようという賞なのだ。
 創始者のジョン・ウィルソンさんは、自他ともに認める筋金入りのムービーオタク。「私の知識は全てフィルムで得たものだ」と豪語する彼だから、映画に思い入れが強いばかりに、駄目な映画には思い切りカツを入れたくなるらしい。(屈折した愛情なのである。うん。)そしてゴールデングローブの翌日、第24回目を向かえた本年度ラジーの候補作品/俳優がついに発表されてしまった…。

 今年は、一般投票の結果、ダントツの票数で発表前から栄えある受賞?が決まっていたのが『GIGLI』。何しろ、最低作品賞、最低主演男優賞(ベン・アフレック)、最低主演女優賞(ジェニファー・ロペス)、最低助演男優賞(アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン)最低助演女優賞(レイニー・ケーザン)、最低スクリーンカップル賞(ベン&ジェニファー)、最低監督賞(マーティン・ブレスト)、最低脚本賞が同じくマーティンと、最多数の9部門(賞)ノミネートとなっている。

 『GIGLI』は公開直後、あまりにも観客導入数が少なかったのがちょっとしたニュースになった程の画期的?な作品。この事態に同情(?)したマサチューセッツのロックチャンネルラジオは、上映後の館内にライトがつくまで客席を離れなかった人に、"I survived Gigli"(最後までジグリを観れました)と書いたTシャツを配るというイベントを行った。
 『GIGLI』に続き、8ノミネーションとタッチの差でサイテーの座を狙っているのが、マイク・マイヤーズ主演の『ハットしてキャット』。加えて、当初はドラマ仕立てで進行する予定だったが、試写会での前評があまりにもお話にならなかったため、急遽お笑い路線に変更したという『カンガルー・ジャック』が栄冠を奪おうと目を光らせている。

 ちなみに、過去のラジー最多受賞者はシルベスタ・スタローンで、計8回ラジーキングに輝いている。(もちろん、今年も最低助演男優賞(『スパイ・キッズ 3-D:ゲームオーバー』)でノミネートされている。)

 なお、賞の発表はLA時間の2月28日で、ちょうどオスカーナイトの前日になる。76年の歴史ある権威アカデミーを、"The Little Gold Naked Men Awards"(ちっちゃな金の裸のおっつぁん賞)なんて呼んじゃって、怖いモノなしの独走ぶりがウケているこの賞、あなたも誰がワーストか予想してみては?
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