TEXT BY 尾崎佳加・岩下慶一

 第76回アカデミー賞ノミネーション発表!
 日本がテーマの3作品と文芸大作に要注目!

 ゴールデン・グローブに続きSAG賞(SCREEN ACTORS GUILD=米国俳優組合)の発表も間近に控え、いよいよ佳境に入ったシーズン。映画最大の栄誉とされるアカデミー賞もついに候補作を発表した。この時期、俳優組合SAGに所属する俳優の卵たちは、オスカー候補作品を無料で観ることができるのだそう。少しでも多くの作品に俳優が触れ、学べるようにという組合からの心遣いは、いかにもアメリカらしい。
 まず、今年の選考作品で触れておかなければいけないのは、日本を舞台につくられた3作品だろう。『ラスト サムライ』は、渡辺謙がゴールデン・グローブに続き助演男優候補に上げられたほか、演出、衣装、音楽編集の4部門でノミネートされている。

 そして外国映画部門では、スウェーデン、オランダなど4国と並んで日本からは山田洋次監督、真田広之主演の『たそがれ清兵衛』が候補に上がっている。この作品は、血なまぐさいシーンが殆どない、家庭や平和を大事にする侍の情緒を描いた作品。英語でのタイトルは『トワイライト・サムライ(The Twilight Samurai)』といい、2003年度は選りすぐりの作品郡の中に“サムライ”というタイトルが2作も登場することになる。
2004年オスカー・オフィシャルポスター
 さらに、『ロスト・イン・トランスレーション』(監督、脚本、作品、主演男優の4部門で候補)も日本を舞台にした作品。全く言葉の通じない国での生活にフラストレーションを抱くハリウッドスターの珍道中~、といったところのストーリーだから、何がなんでも日本を拠点にする必要があった作品ではなさそうだが、東京の街で生活する日本人の忙しさや、京都散策に見られる日本の美を絶妙に表現した仕上がりになっている。

 昨年のジャパニメーション、『千と千尋の神隠し』が火付け役となった日本ブームは、今年さらに勢いを増している。米国のベストセラー小説を映画化した芸者の物語、『メモワール・オブ・ア・ゲイシャ』の製作は、順調に行くと今秋クランクインの予定。スピルバーグや『シカゴ』のロブ・マーシャル監督がメガホンをとりたがったというこの作品、是非とも気合いを入れて、来年のオスカー候補になるような作品に仕上げてもらいたいところだ。
ビル・マーレイさんもビックリのおお化け作品『ロスト・イン・トランスレーション』
 さて、本年度のオスカー、例によって傑作、話題作が目白押しだが、その中でちょっと気になる作品がある。ジュ―ド・ロウ、二コール・キッドマン主演の『コールド マウンテン』がそれ。南北戦争時代を舞台にしたラブストーリーだが、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』を始めメジャーな大作がひしめき合う中、感動のストーリーと2大名優の絶妙な演技が評価され、オスカー6部門でノミネートという快挙を成し遂げた。
 南北戦争で重症を負った兵士(ジュ―ド・ロウ)。最愛の恋人に会うため軍隊を脱走し、彼女(ニコール・キッドマン)の住むコールドマウンテンを目指し辛く長い旅を始める…。
 ゴールデン・グローブでは最多の8部門ノミネートを記録。オスカーでも主演男優賞にジュ―ド・ロウ、助演女優賞にレニー・ゼルウィガーがノミネートされた他、撮影など6部門でノミネートされている。大掛かりな大作を相手に、ストーリーの良さと演技の素晴らしさという映画の基本的な部分で勝負してヒットとなったのはスゴイ。まさにミラマックスの面目躍如たるものがある。また、こういう良い作品を見逃さない所もオスカー選考委員会の見識の深さを表している。個人的にも是非健闘してもらいたい作品。
6部門にノミネートされた文芸ロマン『コールド マウンテン』
 ところで、今から授賞式が楽しみで眠れない、というあなたは オスカーのオフィシャルサイトをチェックしてみよう。ノミネート作品の一覧が見られるほか、過去のデータやエピソードなどが公開されている。これを見ればオスカー通になれること請け合い。面白いのは今年の受賞者を予想するPredict the winnersのコーナーだ。自分の予想を登録し、見事正解すればプラズマモニター始め豪華商品が当たる。途中までの投票結果も見られるので、アメリカのファンがどんな予想をしているのかが分ってなかなか面白い。

 今の時期、LAの街はオスカーの準備で忙しい。あちこちにポスターが貼られ、テレビも新聞もオスカーの話題ばかり。LAが一番活気付く季節だ。
 
 2003年度アカデミー賞授賞式は、LA時間の2月29日日曜日、ハリウッドのコダックシアターで行われる。例年より3週間早まった今年のオスカーははたして、メイド・イン・ジャパンの作品にいくつ華をもたせてくれるだろうか?!
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