TEXT BY 尾崎佳加

 『ドーン・オブ・ザ・デッド』
 -全米を震撼させた究極のホラー-

- もし目の前で、信じてきた全ての世界が変わってしまったら?
- 自分が大切に思う全てを疑い、裏切り、捨てなければいけないとしたら?
- その決断に一瞬も迷う時間を与えられないとしたら?

 今世界のホラーブームの頂点を飾るにふさわしいホラー映画が誕生した。
3月10日『ドーン・オブ・ザ・デッド』の先行試写会を後にした観客たちは、これまでの興奮を静めるように目を閉じつぶやいた。「こんなに驚かされた映画ははじめてだ」
 3月19日(金)米国公開初日、同作は前日まで3週連続トップを独走していた『パッション』を抜いていきなり興行収入NO.1に踊り出た。信仰心の強いアメリカ人が宗教的話題作『パッション』に感心を示すのは当然ともいえるが、『ドーン・オブ・ザ・デッド』はその勢いを封じるのに充分すぎる独創性を備えた作品だった。事実、公開わずか3日間で26,722,575ドルを記録し、前代未聞の話題作としてすでに堂々たるオーラを放っている。
 作品のすごさは後にたっぷりご紹介するとして、公開に先駆け行われたもう一つの快進撃について触れてみよう。この映画には、人々の関心を最大に引き付けるため、あるマジックが仕掛けられていたのだ。

 配給会社ユニバーサル・ピクチャーは、人気映画を多数放送するケーブルTV局、USA NETWORKと組んで映画史上初の画期的なプロモーションを行った。『ドーン・オブ・ザ・デッド』劇場公開の5日前、作品の冒頭の10分間を、まったくノーカットで放送してみせたのだ。アメリカ映画では、内容に子どもやティーンが悪影響を受けるような強い暴力シーンや性描写がないか、放映コードを指定する厳しい審査がある。この作品は過激なアクションや暴力シーンを含むため、コードを "R"(Restricted / 17歳以下は保護者の同伴なしの鑑賞不可)に指定されている。USA NETWORKは子どもから大人までが広く視聴するなメジャーチャンネル。誤ってティーンの視聴者がこの作品を見ないよう、ユニバーサルは事前に何度も厳重な警告を出していた。
ところが「見るな!」と言われれば見たくなるのが人の性。ユニバーサルは事前に「10分間の放映」とは告げていたものの開始時間は午後10時台とだけしか公表せず、興味を掻き立てられた視聴者は10時から画面の前で今か今かのスタンバイ状態となった。仕掛けは完璧に人々の心を引き付けたのだった。

さらに付け加えると、この映画、冒頭10分が全てと言ってもいいほど度肝を抜くシーンの連続なのだ。
観客に考える隙も与えないほど瞬時の展開でストーリーを進めるのは新鋭の監督ザック・スナイダー。今作が映画デビューとなるザックだが、過去CMや有名ミュージシャンのプロモ-ションビデオを製作してきたキャリアの持ち主だ。短時間でインパクトのある演出を得意としてきた彼は、観客を映像の魔法にかける演出を熟知しているというわけ。

こうして『ドーン・オブ・ザ・デッド』は、前代未聞のプロモーションと、その度肝を抜く映像で公開前から絶大な話題を呼び、いきなりボックスオフィスNO.1に踊り出てしまった。ホラー映画としてはまれに見る快挙だ。

アメリカのメディアでは連日この快挙をこぞって報道している。この旋風が日本に上陸するのも時間の問題だろう。来週はさらに作品の魅力に迫った内容をお届けするので、乞うご期待!!

広報の仕掛けも素晴らしかったが、本編の際立った独創性は言葉で語りつくせない。
■『ドーン・オブ・ザ・デッド』公式サイト>>> http://dotd.eigafan.com/
■『ドーン・オブ・ザ・デッド』レビュー> http://www.eigafan.com/New_info/Review/dotd/index.html
<<戻る


東宝東和株式会社