TEXT BY 尾崎佳加

 オリジナリティーは二の次? 2004年的、リメイク作の生き残り術

 リメイク映画が多すぎると囁かれはじめて早数年。独創性のない作品たちを抱え、今ハリウッドはスランプ時代を迎えている。今日も「ネタ切れ」を嘆く厳しい批評が増えているが、当の製作側はあまり気にしていない様子。反省するどころか2番煎じの作品をいかにして新鮮なイメージに変えようかと日々奮闘している。
 2004年、今夏までに公開された映画では少なくとも13作がリメイク作だった。単純計算して月に2本以上のペースでリサイクル映画が誕生しているということになる。そもそもリメイクとは旧作映画を掘り起こし、新時代向けにつくり直して再デビューさせること。だが最近のハリウッドが力を入れているのはどうやらこれだけではないらしい。いいネタはないかと世界中にアンテナをはり、拾い集めた映画を再利用。日本映画、『リング』がそのままリメイクされたのは記憶に新しい。素材がよければどこの国の作品でも映画化してしまう貪欲さはハリウッドならではのものだ。一年しないうちにリメイク? という感じもするが、それだけ人を集める力がある作品を放っておくのは非常に惜しいのだろう。そこで落ち着いたのが続編モノの大量生産である。
 新作当初は1話で完結する予定だったが、作品が当たったので急きょ続きをつくった―。少し前まではこの手の棚ぼた式続編が多かった。1作目の七光りがあれば失敗のリスクも少なく、打率は当然良くなる。メリットだらけの結果に味をしめた製作者は、『マトリックス』シリーズや『キル・ビル』のように、2作目をほのめかすエンディングで終わる作品を大量につくり始める。

 かくして巷には1作目のお尻に“2”やら“3”やらがついた続編モノが溢れている。1作目に飛びついたファンはリピーターとなり劇場に帰ってくる。だが裏を返せば1作目を見逃した人には永遠に未知な作品が続いていくだけである。当然のことながら“6”や“11”が出ても観ない人は観ないままなのだ。新規に観客を寄せ付けるにはどうしたものか? ハリウッドの試行錯誤が始まった。
 まず、1作目に興味を示さなかった人に改めて作品をアピールするサブタイトルの追加だ。例えば、床屋は黒人社会の大切な社交場だ!と熱く教えてくれるコメディー、『バーバーショップ』では、2作目のタイトルに"Back In Business(復業)"と加え、1作目で主人公が休業しなくてはいけない何かが起こっていたことをほのめかしている。そして9月には日本のゲームを映画化した『バイオハザード』が続編を出す予定。こちらも"Resident Evil:Apocalypse(黙示)"と世紀末の悲壮感が伝わる副題をつけ、新たにファンの興味をあおるもくろみだ。
続編モノのタイトルには密かな工夫がなされている
 大ヒット作品のタイトルをひとひねりして人々の興味をあおるのもよく使われる手だ。ブルース・ウィリス主演のコメディー『隣のヒットマン』 ― 原題"The Whole 9 Yards"。平和に暮らす歯科医が隣にヒットマンが引っ越してきた日から人生崩壊の一途をたどるというドタバタコメディーだ。隣家までの距離を9ヤードとして命名したタイトルは単純で解かりやすかったが、続編はまさかの"The Whole 10 Yards"。実に横着なネーミングだが「やられた」感でプっと吹きだし劇場に行ってしまいそうになる。(でも、さらに迫る危機感を表現するために8ヤードに縮めた方がよかったのでは?)また、カジノを襲撃するため結集したMr. オーシャン率いる11人の男たちの映画、『オーシャンズ11』。無駄がなくシンプルなタイトルだったが、2作目は新メンバーが加わって『オーシャンズ12』…。あまりにそのまんますぎてパロディーかと感違いしてしまう。
 こんなお遊びのようなタイトル合戦が繰り広げられる一方で、ヒットした作品の過去に遡るリメイク手法、過去編作がある。

 『羊たちの沈黙』('91)、『ハンニバル』(01)を経て去年公開された『レッド・ドラゴン』。冷酷な紳士、レクター博士がFBI捜査官クラリスに出会う以前、『羊~』よりも過去に焦点をあてたこの作品は、初回作より時代をさかのぼったことからシリーズ最新作にして「第1作目」と呼ばれている。これには少々訳があって、有名なトマス・ハリスの3部作の第1作、レッドドラゴンは、すでに低予算B級映画として制作されてしまっていたため、話の流れとしては2つ目の『羊たちの沈黙』が最初に映画化された。これが大ヒットとなったので、再び過去に遡って『レッド・ドラゴン』が映画化されたのだ。今年は『エクソシスト・ザ・ビギニング(原題)』がこの手法にならって第1作目を製作中。魔物に憑依された少女の悪魔払いをしたメリン神父の過去は、8月に全米で明らかになる予定だ。
 2005年公開予定の作品をみても、今後リメイク作品が減る様子は一向にない。『ミッション・インポッシブル3』、『ラッシュ・アワー3』、『インディー・ジョーンズ4』や懐かしの『グーニーズ』も復活予定。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督は『キングコング』の製作を8月に開始する。

 ひねりがあればリメイクだって続編だっておもしろいのではないのか。借り物の衣装も自己流に着こなせるならオリジナリティーにこだわる必要はない。こういう私は寛容すぎるだろうか?
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