TEXT BY 尾崎佳加

 徹底探索企画! ハリウッド通りには何がある? (Part 2)
 ― 6100 ~ 6767 Hollywood Blvd. ―

 前回から出発したハリウッド通りを巡る旅。観光バスで映画一色に包まれたツアーに興奮気味の人々を追い、私もその後をついて行く。
 ハリウッドの中心部にさしかかると真っ先に出迎えてくれるのが、歩道に散りばめられたピンクの星群だ。


■6100番地  “セレブの殿堂 ウォーク・オブ・フェイム”
6100-7000 Hollywood Blvd. (Gower St. - La Brea Ave. 間)
 星型の敷石に新しい名が刻まれる日、スターが自ら星を受け取る儀式が行われる。この日の主役は必ず出席する決まりがあり、来られないならセレモニーは行われず、従って星型が刻まれることもない。この厳粛さゆえに伝わる哀しいエピソードが一つ。

 カントリーミュージック界での功績を認められ、殿堂入りを果たしたジョン・デンバーは多忙のためセレモニーに出席するスケジュールが取れず、星型を刻む儀式がのびのびになっていた。ところがある日、ジョンは突然の飛行機事故に見舞われ97年に帰らぬ人となる。あれほどの大スターにも関わらず、ついに彼の名前は刻まれることがなかった。ハリウッドは彼の名前を星型の候補者名簿に入れたまま、7年経った今でも来るはずのないジョンを待ちつづけているのだった。
セレブの殿堂。映画、TV、ラジオ、演劇、音楽界で活躍したセレブを称えるメモリアル


■6233番地 “パンテージ劇場”
6233 Hollywood Blvd Los Angeles, CA 90018 TEL(323) 468-1770
 アカデミー賞授賞式が初めてTVに放送された53年。パンテージのステージに舞い降りた“永遠の妖精”オードリー・ヘップバーンに世界中の目がくぎ付けになった。その後も約10年にわたりオスカーナイトのホストを務めたパンテージ劇場は、現在ミュージカル劇場に生まれ変わっている。最近では「オペラ座の怪人」や「ライオンキング」の公演が絶賛され、ブロードウェイさながらの盛り上がりを見せた。アール・デコ様式で仕上げられた内観も「見学だけに入場料を払ってもいい」と言われるほど美しく、『ボディーガード』('92)でアカデミー授賞式のシーンの舞台になったほど。オスカーと共に歩んだパンテージの貫禄が臨場感のある場面をより引き立てていた。

 ハリウッドはあらゆるエンターテイメントの集まる街。通りに軒並み並ぶタトゥーショップやパーティーコスチュームの店を見ても、ハリウッドの顔が映画だけではないことがわかる。体中に刺青の入ったお兄ちゃんとカメラをぶら下げた観光客が交差する街には、古代エジプト宮殿そっくりの映画館だってあるのだ。
パンテージ劇場。今シーズンはアバの曲を基調にしたミュージカル「Mama Mia」が公開中


■6712番地  “エジプシャン・シアター”
6712 Hollywood Blvd. TEL:(323) 466-3456
 劇場王シド・グローマンは、1922年に発見されたツタンカーメン王の墓に新しい劇場作りのヒントを得た。完成した映画館は外観以外なんらエジプトに関連はなかったが、奇抜なデザインがとにかく人目を引きエジプシャンと名付けられた。当時、映画の都はロサンゼルスのブロードウェイ(連載207)からハリウッドに移り行く節目を迎えていた。そこに来て当時のトップ俳優ダグラス・フェアバンクスによる『ロビン・フッド』('22)(もちろん白黒サイレント)が映画史上初のプレミア試写会を行った事が功を奏し、エジプシャンは今日のハリウッドの栄光を不動のものにした。ちなみに、ロビンフッドは当時のお金で100万ドルをかけたハリウッド超大作の走り。今で言えば『ロード・オブ・ザ・リング』みたいなものか。
エジプシャン。映画以外のハリウッド的エンターテイメントを紹介するイベントも頻繁に開催される
 その後、ロサンゼルス大地震の影響で一時閉鎖していた劇場もハリウッドの歴史館として復活。大勢のスターが出演し、ハリウッドの歴史を語るドキュメンタリー映画『ハリウッド・フォーエバー』を独占上映している。


■6764番地 The Guinness Museum & 6767 Hollywood Wax Museum
6764 Hollywood Blvd. TEL:(323) 462-5991
 ギネスは直接映画に関わるミュージアムではないが、第2次ハリウッド創世記を助けるのには必要不可欠な存在だった。TVの普及で映画産業が不況にあえぎ、ハリウッドから客足が遠のいたころ、通りの活気を取り戻すのに一役買ったのはこのサイエンス系娯楽施設だった。世界一大きなりんごや世界一背の高い男など、ギネスが選考したトリビアに惹かれて人足が戻ってきた。また、向いに位置するワックス(ろう)人形館も今日のハリウッド名物だ。展示されているスターはもっぱら「似てない」説が流れているが、びっくりするぐらい不細工な彼らを笑いとばす位の気持ちで行くと楽しめるはずだ。
向い隣のギネスミュージアム(左)とワックスミュージアム(右)。両方訪ねると入場料が割引になってお得
 まだまだ続くメインストリートの中心部は次週でご紹介!  <つづく>
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