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TEXT BY 尾崎佳加

　インディペンデント系映画の登竜門　ロサンゼルスフィルムフェスティバル

　毎年夏から秋にかけてロサンゼルスやニューヨークなどの主要都市では、学生やアマチュアが活躍するインディペンデント系の映画祭が次々開催される。先月、10日間に渡り開催されたロサンゼルスフィルムフェスティバル(LAFF)でも、多くの力強いメッセージを持ったインディペンデント作品が出展された。

　今年で第25回を迎えるLAFFは、インディペンデント系映画製作をサポートする目的で開始された映画祭。開催期間は10日間と、この種の映画祭では比較的開催期間が長く、毎年よせられる応募作品は3000作にも上る。開催地はハリウッドを中心としているが、より多くの人にインディペンデント映画の良さを知ってもらうため、ロサンゼルス近郊のシアターも手配して、誰もが気軽に訪れられる環境づくりに力を注いだ。

　毎年のことだが、LAFFで上映された作品のジャンルは実に多様だった。ドキュメンタリー、海外映画、ファミリー向け、ミュージックビデオ、ゲイ＆レズ、ホラーなどなど、一般の劇場では見られない選りすぐりの作品群200がスクリーニングされた。

先月17日から10日間に渡り開催されたロサンゼルスフィルムフェスティバル

　インディペンデント系映画の良さは、その独創性。全世界に配給することを前提としてつくられるハリウッド映画と違い、独立系は大衆性を求める必要がない。だから、製作する側に強いられる規制が少なく、監督の描きたいテーマが作品に自由に表現されている。中にはつくり手だけが理解できるような独りよがりのストーリーも多いが、予想もしないストーリーや今までにない感性に出会える可能性がある。

　今年、LAFFの最優秀作品となったのは『Unknown Soldier』(無名の兵士)。遊ぶことしか頭にないニューヨークのハーレムに住む18歳の少年が、父親の死をきっかけに家を追い出されホームレスになっていく。生きるために犯罪に手をそめていく主人公をドキュメンタリータッチで描いたかなり重たい作品だが、監督のFerenc Tothはこの作品で一気に注目を集めることになった。毎年生まれる映画界の新しいヒーローを見るのもLAFFの楽しみの一つ。

　LAFFはアメリカンフィルムマーケット等の、映画買い付けのための映画祭とは異なり、商売を目的としない。あくまでインディーズ映画のお披露目会的なイベントだ。もちろん大規模な映画祭に出展されるよりすぐりの作品群をハリウッドの目ざといバイヤーが見逃すわけがなく、ここからハリウッドデビューを果たした作品も多数ある。TV番組「フレンズ」のジェニファー･アニストンのスクリーンデビュー作となった『グッド・ガール』や、キアヌ･リーブスが友情出演するドキュメンタリー映画『Mayor of the Sunset Strip』、ストレート(異性愛者)だった女性がレズビアンに目覚める心境の変化を描いた『KISSing ジェシカ』などもLAFFで全米配給のチャンスをつかんでいる。

　LAFFはまた、“The Low Budget Summit”と題した低予算映画を応援するイベントにも力を注いでいる。予算のない映画製作者が、ロウバジェットでいかによい作品を仕上げるかは独立系映画製作の永遠の命題だ。また、完成作を配給する(つまり、ディストリビューターに買ってもらう)ための売り込み方も知っていなければ、どんなに優秀な作品ができてもお蔵入りとなってしまう。やっと完成させたはいいが、配給のチャンスをつかめずに消えていく映画はかなり多いのだ。もともと監督や脚本家は独自の世界観を持った芸術家気質の人々だが、インディペンデント系のスタッフは特にアーティスト肌が多い。こういう人々は概して口下手でセールスはまったく駄目。自作の売り込み段階になるとどうやっていいのかまるで分からない。売り込みが下手なばっかりに、日の目を見ずに終わってしまった名作はそれこそ無数にある。LAFFはこうした作品に少しでもスポットを当て、より多くの独立系作品が人々の目に触れるチャンスをつくるための映画祭なのだ。

　アメリカは今、明日のハリウッドを担う、力強いテーマを持つ映画を求めている。日本でインディペンデント映画を制作している方々、LAFFに出品することを考えてみては？

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