TEXT BY 尾崎佳加

 【HOLLYWOOD TODAY】 注目を集めだしたアジアンスターたち

 「冬ソナ」の大ヒット以来、日本は韓国ドラマブームに沸いているそうだが、ここハリウッドでもアジア映画作品の人気はまだまだ衰えそうにない。最近はアジア系の俳優たちの注目度も高まってきて、ますますアジア色が濃くなってきているのだ。
 このブームのおかげでハリウッドでの成功を夢見るアジア系俳優の門戸は一気に広がった。その恩恵を最も受けている俳優の一人が、ケン・ラング(Ken Leung)。ニューヨーク出身の中国系アメリカ人で、『スパイ・ゲーム』(01)、『バニラ・スカイ』(01)、『A. I.』(01)、『レッド・ドラゴン』(02)などメジャーな作品で重要な脇役をこなしてきた味のある俳優だ。どちらかというとシリアスな役どころが多いケンだが、彼の抜群のコメディーセンスの良さがうかがえる作品もいくつかある。中でも強烈なインパクトを放っていたのが『僕たちのアナ・バナナ』(00)。中国系移民の訛りで謎のカラオケマシーンを押し売りする電気屋の店員がかなり印象的だった。
 同じく人気上昇中なのが韓国系アジアンスター、ジョン・チョー( John Cho)。おばかな青春コメディー『アメリカン・パイ』シリーズでキレのあるバカを演じていた、あのアジア人が彼である。同シリーズで主役のティーンたちを食う存在感をアピールしたジョンに、多数のテレビ局や映画界から主演のオファーが殺到。最新作『ハロルド&クマー ゴー・トゥー・ホワイト・キャッスル』(原題)ではアジア人2人(ジョンの相棒役もまたアジア人)が主演を張り、ハリウッドでは極めて異例の快挙を成し遂げたのだ。ジョンの人気はとどまるところを知らず、ピープル誌恒例の「最も魅力的な男性50人」にもランクイン。ブラッド・ピットやトム・クルーズと共に並んだジョン・チョーの名は、ハリウッドにも韓国スターブームが上陸することを暗示している…?
ジョン・チョー主演の『ハロルド&クマー ゴー・トゥー・ホワイト・キャッスル』(原題)
 黒人、東洋人、ヒスパニック系…。白人俳優以外のマイノリティーが主演を掴むまでの道のりは長かった。ハリウッド黄金時代には、黒人役、東洋人の役もみな白人が演じていた。一昨年のアカデミー賞で、黒人初の主演女優賞受賞に泣き崩れたハル・ベリーが記憶に新しい。彼らが映画の都で成功を手にするのは極めて困難なことだったのだ。

 だが時代は移り変わり、マイノリティー俳優の需要を否定できないハリウッドは着実に開国時代を迎えている。来年公開予定の大作『さゆり』ではチャン・ツィイー(『グリーン・デスティニー』(00))が主人公の芸者さゆりを演じることが決まっている。その脇を固める準主役の顔ぶれも渡辺謙、役所広司、工藤夕貴たちで、生粋のハリウッド俳優など一人もいない。これだけの東洋人俳優を起用するということのみならず、母国語が英語でない外国人俳優が役を得ることなど、一昔前のハリウッドではありえなかった。
 昔、ハリウッド映画に登場する東洋人といえば、きまってダサくてこっけいなキャラクター設定だった。最も成功しているアジアンスターのジャッキー・チェンは、茶目っ気のあるアクションコメディーの路線を歩んだことで人気を得た。これからの時代は、東洋人がシリアスな演技でハリウッドに挑む絶好のチャンス。今年のアカデミー賞はアジアの年になりますように!
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