TEXT BY 尾崎佳加

 ハリケーン・カトリーナ 政府の対応処置を非難するハリウッド

8月29日、大西洋を襲ったハリケーン・カトリーナ。米国史上最もひどい損傷をもたらした破壊的な熱帯低気圧は、わずか数日でアメリカ東部の湾岸地域を文字通りの泥沼に変えてしまった。
5日、オプラ・ウィンフリーは特に被害の大きいニューオリンズを訪れ、18500人の被災者たちを励ました。同日、前ブッシュ大統領とバーバラ夫人、前クリントン大統領と夫人のヒラリー上院議員も各自非難シェルターを訪れ、この悲惨な災害に見舞われた人々に最善の援助を尽くすことを誓った。それにもかかわらず、避難所に残された被災者たちは依然、未だやってこない救助をひたすら待つのみという状態が続いている。街では排気ガスと埃にまみれた外気にさらされ、生まれたばかりの赤ん坊を包み込むように抱く痛ましい母親の姿が報道された。ギャングたちは力に任せてシェルターを独占し、被災者たちを暴力と権力で支配した。
オプラはこの事態に憤りを覚え、トークショーで「アメリカは彼らに謝罪するべき」と国家の対応を非難した。政府の対応が遅れたため、災害の程度が深まったと考えるハリウッドの有力者はオプラだけではない。元NBA選手で現在はフィットネスセンターなどを運営する実業家のマジック・ジョンソンは、ロスのシェルターに避難している被災者たちに仕事を与えることを約束した。ジェイミー・リン・スピアーズ(ブリトニー・スピアーズの妹)は赤十字でボランティア活動をしている。ローリング・ストーンズは100万ドルの支援金を同団体に寄付し、全国ツアーの各地でファンにも支援金を募ることを発表した。
ここに挙げたハリウッドの支援者はごく一部で、テレビの生中継テレソンではその他の多くのスターが出演し、視聴者の協力を訴えている。中でも今回、特に目立っているのは黒人の活動家だ。カトリーナが襲った湾岸地域は黒人の低所得者の住む貧困街だったため、被災者の割合は圧倒的に黒人が多かったのである。これに対しマイケル・ジャクソンは、自ら作曲するチャリティーソング「From the Bottom of My Heart」への参加をミュージシャンたちに呼びかけ、レニー・クラヴィッツ、マライア・キャリー、R・ケリー、メアリー・J・ブライジ、ミッシー・エリオットら多数の黒人ミュージシャンたちがこれに応えた。チャリティーコンサート番組「Concert for Hurricane Relief」に出席した人気ラッパー、カニエ・ウェストは「ブッシュは黒人なんてなんとも思っていない」と生中継でブッシュ大統領を非難。ジェイ・Zやアッシャーがこれに賛同するコメントを寄せ、新たな波紋を投げかけることになった。救助活動がままならない状況で浮上した人種問題は、新たな問題に発展することになりかねない。
街角の募金箱
カトリーナは、アトランティック・ハリケーン・シーズンに大西洋で発生する熱帯低気圧の一つ。同系統の低気圧にはチャーリー、ジェーン、フランシスがあり、いずれも昨年フロリダに深刻な被害をもたらした大型ハリケーンである。低気圧に名前をつけるのは、複数のハリケーンが同時多発したときに識別しやすいため。名前は米気象庁が決めたリストの中から選ばれ、一度使用された名前は6年間眠った後に再使用されるという。例外として、大きな被害をもたらした歴史的なハリケーンの名はその後リストから除外され、2度と使われることはない。2011年、再びハリケーン・カトリーナが現れることはありえないと言えるだろう。
ハリケーン・カトリーナの犠牲となった死者は現在、数千人とも予想されている。だが、救助活動が難航している被災地で、正確な被害者数を把握できないのが現状だ。被災地では今もなお多くの人々が未だ来ない救助を待っている。
【カトリーナ支援金受付団体】
以下のホームページで日本からも募金が行えます。

●日本赤十字:http://www.jrc.or.jp/
●日本YMCA:http://www.ymcajapan.org/

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