TEXT BY 尾崎佳加

 GLBTをテーマにした作品が健闘。第63回ゴールデン・グローブ賞

今月16日、ビバリーヒルズのヒルトンホテルで第63回「ゴールデン・グローブ賞」授賞式が開催された。今年のノミネートされた作品は、総じて社会問題やモラル、思想をテーマにしたドラマ性の高いラインナップという印象を受けた。
中でも、特筆すべきは監督賞、脚本賞他4冠を受賞した『ブロークバック・マウンテン(原題)』を筆頭に、GLBTをテーマにした作品が多く名を連ねたことだ。(GLBT=Gay, Lesbian, Bisexual, Transgenderの略。同性愛、バイセクシャル、トランスジェンダー=性同一性障害)
60年代アメリカ、閉鎖的な田舎で暮らすカウボーイの許されない恋を描いた本作品は、性描写とテーマのモラルが問われ、全米各州で上映を巡り物議を醸した問題作としてもメディアの注目を浴びていた(ユタ州は公開間近に上映中止を発表)。
また、性転換手術を受けた父と生き別れた息子が奇妙な再会を果たす『トランスアメリカ(原題)』で父親(母親)役を演じたフェリシティ・ハフマンは、自分を父親として慕う息子に、自分の自我が女性であることを認めさせていく過程をコミカルに演じ、最優秀主演女優賞(ドラマ部門)を受賞した。キリアン・マーフィが最優秀主演男優賞(ミュージカル&コメディー部門)にノミネートされた『ブレックファスト・オン・プルト(原題)』もGLBTがらみの作品。IRAの活動に巻き込まれるトランスジェンダーの男性を描いた快作だ。ゲイの演出家が異色のミュージカルを製作するブロードウェイコメディー『プロデューサーズ(原題)』は、惜しくも受賞は逃したものの、作品賞他4部門の候補に挙がっていた。
『トランスアメリカ』で最優秀主演女優賞を受賞したフェリシティ・ハフマン。
(c)HFPA / 63rd Golden Globe Awards
さらに、フィリップ・シーモア・ハフマンが最優秀主演男優賞(ドラマ部門)を受賞した『Capote(カポーティ/原題)』。『ティファニーで朝食を』の作家として知られるトールマン・カポーティの伝記的作品だが、図らずもゲイのカポーティを主人公としたことで米メディアのGLBTフィーバーの追い風となった。
まるで申し合わせたようなGLBT映画のラッシュ。こうした作品はこれまでスポンサーの顔色をうかがわずにすむインディペンデント系の映画に限られていた。ゴールデン・グローブのような世界的に影響力を持つ賞が、タブー視されてきたGLBTにスポットを当てたのは興味深い。今後のハリウッドのメジャー作品にも大きな影響を与えることになるだろう。
『カポーティ』で最優秀主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマン。
(c)HFPA / 63rd Golden Globe Awards
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