TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)
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アーバンワールド フィルムフェスティバル2000
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ブラックおよびマイノリティ(ラテン系、アジア系フィルムメーカーを対象にした映画祭「アーバンフィルムフェスティバル」が8月2日から6日にかけての週末に開催された。97年にスタートして以来今年で4回目、当初は35作品だったが回数を重ねるごとに規模も拡大され、今回の映画祭ではフィーチャー14本、短編21本、ドキュメンタリー10本、ラテン&アジア作品17本による構成となっている。以前に出品された中では『The Best Man』、『 Soul Food』(邦題『ソウル・フード』)、『 Hoodlum』(邦題『奴らに深き眠りを』)、『How Stella Got Her Groove Back』(邦題『ステラが恋に落ちて』) などがその後一般公開されヒットを飛ばし、またドキュメンタリー部門で99年度アカデミー賞をゲットした『On the Ropes』もこのフェスティバルでデビュー。規模の拡大とともに数々の実績も確立し、現在アメリカでは最も注目されるマイノリティ系映画祭のひとつとなっている。
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今回は久々のスパイク・リー監督作品『The Original Kings of Comedy』のプレミアショーが行われ、ますますこのフェスティバルの存在を強力に印象付けた。この映画はスティーブ・ハーベイを中心としたスタンドアップショーのライブドキュメンタリーフィルム。残念ながらスパイク リー監督は現れなかったが、出演したコメディアンらの舞台挨拶でオーディエンスは笑いの渦。映画上映中も実際にライブショーにいるかのように拍手はもちろん、歌ったり踊り出したり大爆笑でイスから転げ落ちたり、あっけにとられるくらいの観客の熱狂ぶりだった。またラッパーJay-Zの“Hard Knock Life Tour”を追った同じくドキュメンタリーフィルム『Backstage』のプレミアショーも行われ、こちらもソールドアウトとなっている。最終日にはフェスティバル2000年度受賞作品の発表と上映会が行われた。受賞作品は以下のとおり。
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<ベスト短編フィルム賞2作品>
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『Are you Cinderella?』 チャールス・ハル監督
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二日酔いで目覚めた男が前夜のロマンティックな記憶と片方だけ残された靴をたよりに、トゥルーラブと理想の女性を求めマンハッタン中を探し回る。もう片方の靴をはいていたホームレスの女の子をみつけて…というストーリー。もともとは社会派の作品に携わっていた監督だが、この映画はほのぼのしたコメディ要素のあるものとなっている。
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『Kiss up to God』 キーラン・フェイトスフィールド監督
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元美術教師のフェイトスフィールド監督はNYU映画科のマスター取得後4本の作品を撮影。この作品はカンヌ映画祭での受賞作。もしもフェリディコ・フェリーニ監督がブラックの女性だったらこんな作品を撮ったであろうと思わせられる、将来が嘱望される監督である。
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<ベスト長編フィルム賞>
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『One Week』 カール・シートン監督
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結婚直前にHIVに感染しているかもしれないとテストを受けた男が主人公。テストの結果が出るまでのハードな1週間を題材にしている。
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<ベストドキュメンタリーフィルム賞2作品>
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『Freestyle』 ケビン・フリッツジェラルド監督
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ヒップホップカルチャーの重要な要素であるフリースタイル。アーティスティックなパフォーマンスと詩は、ヒップホップが持つ従来のギャングスタラップのイメージを変える。
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『Scottsboro: American Tragedy』 ダニエル・エイケン・バラーク・ グッドマン監督
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1831年にアラバマで起こった白人対黒人の抗争の中、二人の白人女性が9人の無実の黒人青年をレイピストとして告発。人間が政治的材料として取り扱われることの悲劇を描く。
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<ベスト観客フィルム>
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『The Visit』 ジョーダン・ウォーカー=パーリマン監督
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無実のレイプ犯として服役しているアレックスのもとを訪れる家族たちの絆と人間模様を描いた作品。アレックスはエイズの感染者でもあり、2重の重いテーマとなっている。かなりセンチメンタルで泣かせられる。特にアレックス役のヒル・ハーパー(Beloved, He Got Gameに出演)の演技のうまさに泣かせられた。
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以上の受賞作品の他、政治犯として死刑宣告を受けているMumia氏のドキュメンタリー『Voice of the Voiceless』、コスビーショウで人気のダグ・ E.ダグ監督のコメディ作品『Citizen James』等、入賞はしなかったが個人的な絶対お薦め作品もある。まだまだハリウッドではほんの一部のブラックやマイノリティにしかチャンスは巡ってこないが、この映画祭の発展によってアメリカ映画インダストリーのシステムに変革が起こりつつあると確信している。そしてこれらの映画がいつか日本に配給されることも期待したい。
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