TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)


 9月7日、国連で過去最大規模のミレニアムサミットが行なわれていた日。ラジオシティミュージックホールではMTVビデオミュージックアワード2000が開催された。そのため、ミッドタウンにあるラジオシティホール周辺は国連地区とともに交通規制があり、この日マンハッタンで行われた政治とエンタテイメントの2大ビッグイベントは、道を急ぐ人にとっては頭痛のタネとなってしまったようだ。ラジオシティの1ブロック内は撮影を狙うパパラッチ、野外ステージで行なわれるライブを観ようとする人、ひと目でもセレブの姿を見たいという熱狂的ファン、そして警官で埋め尽くされた。

 6時頃からホールの正面に設置されたレッドカーペットに向かって続々とストレッチャータイプのリモが到着。窓は閉まったままなのでいったい誰なのかまったくわからないけどみんな歓声を上げたり、窓を開けろなどと野次をとばしたりしている。6時過ぎホール屋上野外ステージで新人賞部門にノミネートされたパパ・ローチの前座ライブが始まると、観衆は本番に向けて一挙に盛り上がりをみせた。

 VMA2000の司会者はこの夏『最終絶叫計画(原題:「Scary Movie」)』が大ヒットして時の人となったショーン&マーロン・ワイアンズ・ブラザーズ。前回の司会者クリス・ロックをパロってみせたり、マーロンはいきなり観客の前でお尻を丸出しにしたりと初っ端からぶっとばす。そして彼等に紹介されて『ナッティ・プロフェッサー2 クランプ家の面々(原題:「Nutty Professor II: The Klumps」)』で久々に映画に出演したジャネット・ジャクソンがVMA2000のオープニングパフォーマンスを行なった。

 今回1番話題になったのがインシンクとエミネム。どちらも6部門のノミネートで過激系ラップスターとアイドル系ポップスターの賞取り対決といわれていた。エミネムに関しては拳銃所持で捕まったり実の母や妻から訴訟を起こされたりと、過去かなりのスキャンダルを巻き起こしている。前回のコラムでも書いたゲイ&レズビアン人権運動団体GLAADのエミネムへの抗議デモが予定通り会場周辺にて決行。MTVサイドはエミネム擁護について槍玉に挙げられることを危惧したのか、GLAAD代表者の「MTVはヘイトクライムを引き起こさないよう責任を持たなければいけない」と言う内容のインタビューを番組冒頭に流すという配慮もあった。暴動こそ起こらなかったが、ショーが行なわれている最中にベストロックビデオ賞から落選したレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーが舞台装置によじ登りショーの進行を妨害、警察に連行されるというハプニングがあった。

 さて、ミュージックビデオアワードといっても毎回映画関係者もいっぱい登場する。大物ではロバート・デ・ニ-ロがプレゼンテーターで登場。多少しどろもどろだったけどベン・スティラーのフォローでなんとかその場を切り抜けたって感じ。ジム・キャリーは「僕はちょっと怖いんだけどエンジョイできるアーティスト」とエミネムの紹介をした。映画のサントラに送られるベスト音楽ビデオには『ロミオ・マスト・ダイ(原題:「Romeo Must Die」)』からアリーヤの「Try Again」が選ばれた。この映画でスクリーンデビューしたアリーヤは映画2作目をオーストラリアで撮り終えたばかりでかけつけた。アフターパーティのあとはそのままロンドンに向かうという超売れっ子ぶり。先日公開された『The Cell(原)』が大ヒット中のジェニファー・ロペスは「Waiting For Tonight」でベストダンスビデオ賞に。また会場に現れなかったマドンナからは「子供達に観るのを許してる番組はVMAだけよ」と電話で声援が送られた。

 VMA2000のメインであるビデオオブザイヤーに輝いたのはエミネムの「The Real Slim Shady」。ライバルのインシンクと共に受賞作3作品づつとなったがビッグな賞をゲットしたエミネムが結果的に一歩リード。今後どこまで人気を維持していくのかに期待したい。


★★★ 受賞作品リスト ★★★
★ビデオ・オブ・ザ・イヤー賞 エミネム「The Real Slim Shady」
★ベスト男性アーティスト賞 エミネム「The Real Slim Shady」
★ベスト女性アーティスト賞 アリーヤ「Try Again」
★ベストグループ賞 ブリンク-182「All The Small Things」
★ベストラップ賞 Dr.ドレ feat.エミネム「Forgot About Dre」
★ベストR&B賞 ディスティニーズ・チャイルド「Say My Name」
★ベストヒップホップ賞 シスコ 「Thong Song」
★ベストダンス賞 ジェニファー・ロペス「Waiting For Tonight」
★ベストロック賞 リンプ・ビズキット「Break Stuff」
★ベストポップ賞 インシンク「Bye Bye Bye」
★ベスト新人賞 メイシー・グレイ「I Try」
★ベストビデオフロムアフィルム賞 アリーヤ「Try Again」(『ロミオ・マスト・ダイ』サントラより)
★視聴者賞 インシンク「Bye Bye Bye」
★ブレイクスルービデオ賞 ビョーク「All Is Full Of Love」
★ベスト監督賞 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「Californication」
★ベスト振り付け賞 インシンク「Bye Bye Bye」
★ベスト特撮賞 ビョーク「All Is Full Of Love」
★ベストアート監督賞 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「Californication」
★ベスト編集賞 エイミー・マン「Save Me」
★ベストシネマトグラフィー賞 メイシー・グレイ「Do Something」


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