さて、このように映画とも関わりを持つHip-Hopが、いまニューヨークで大々的にアートとしての市民権を得ている。というのはHip-Hopをテーマにしたマルチメディア・エキジビションがブルックリン・ミュージアムで開催されているのだ。音楽シーンだけにとどまらず、あらゆるカルチャーシーンを凌駕しようとする勢いのHip-Hopの魅力を探ろうと、アフリカンアメリカンのみならず通常はHip-Hopには縁のない人々まで美術館に足を運んでいる。NYブロンクスで生まれ、過去25年の間に最もアメリカのカルチャーに影響を与えたとされるHip-Hopのルーツと軌跡を辿るエキシビションタイトルは「Hip-Hopネイション:ROOTS,RHYMES,&RAGE」。400アイテム以上の展示品は70'Sから現在までのファッション、ビデオ、アート作品などで構成されている。
まず70年代から80年代初期にかけて台頭したHip-Hopのパイオニア的存在アフリカバンバータの奇抜な衣装やオーディオサウンドシステから始まり、80年代中期から90年代にかけてのゴールデンエイジといわれる時期に活躍したパブリックエナミーのシンボリックなアクセサリー(ゴールドのチェーンや時計)、Run-DMCの靴紐のないアディダスなどが展示されている。注目されるのは今は亡き2PACとThe Notorious B.I.Gのパーソナルアイテム。特に2PAC直筆の、彼自身が夭折を予感している内容のメモは見ていると切ない。
人種、性別、階級、言葉、国境をすべて越えてグローバルに広がっていくHip-Hopは、ユースカルチャーだけの中にとどまらない。現在問題となっているNYの警察暴行事件に対し、ブルックリン在住のラッパーMos Defがリードする社会コミュニティ運動も担っている。お決まりのテーマであるマネー&パワーの短絡さや、ギャングスタ・ラップのダークサイドが取り沙汰されがちのHip-Hopだが、そのポジティブな魅力を知る絶好のチャンスだ。エキジビションの開催は12月31日まで。
|
|
|
Brooklyn Museum of Art
200 Eastern Parkway
Brooklyn, NY 11238
Tel:718-638-5000
料金:一般$4/学生$2/シニア$2
時間:水-金10:00-17:00/土日11:00-18:00 |
|