TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 この週末ミッドタウンのプラザホテルでマイケル・ダグラスとキャサリン=ゼタ・ジョーンズの2ミリオンダラー・ウェディングパーティが開かれた。カーク・ダグラスはもちろん、スティーブン・スピルバーグ監督、シャロン・ストーン、トム・ハンクス、ウーピー・ゴールドバーグ、ラッセル・クロウ、メグ・ライアン、ブラピ&ジェニファー・アニストン夫妻、ジャック・ニコルソンらが祝福にかけつけての大セレブパーティとなり、ホテル周辺は交通規制もあるほどの大変な騒ぎ。大統領選挙の動向に飽きたニューヨーカーの新しい話題となった。片やハーレムでは今最もHIPな天才ダンサーのアットホームなバースデイパーティが行われた。今回は週末開かれたセレブパーティでも、こちらの知る人ぞ知るレア情報をお届けしたい。

 「タップダンスを蘇らせた救世主」ともいわれる天才ダンサー&コレオグラファー、セヴィオン・グローバー。最近ではスパイク・リー監督の新作『Bamboozled』でデモン・ワイアンズ、ジェイダ・ピンケット・スミスらと共演し、その天才的、というより天才そのもののタップダンスを大スクリーンで披露している。この役はリー監督がセヴィオンのために当て書きしたもの。人種問題を盛り込んだコメディとも悲劇ともいえない、観た人をなんともフクザツな心境にさせる映画だが、人々の物議を醸し出す内容はともかく、セヴィオンのタップは圧巻。ナマの舞台を観るチャンスがいままでなかった人には彼の神業を観る絶好のチャンスとなった。

 11歳でブロードウェイ・デビュー、87年の舞台「BLACK and Blue in Paris」で13歳にして史上初最年少のトニー賞にノミネート。96年には「Bring In Da Noise, Bring in Da Funk」を大ヒットさせ、コレオグラフィー部門でトニー賞を獲得。その時弱冠22歳。またセヴィオンは「セサミストリート」やコークのファンキーなコマーシャル、パフダディのMVDなどでTVにも登場し、オールドファッションに陥りそうだったタップダンスをヒップでポピュラーなものとして世に知らしめる役割を果たした。

 そんな彼の27才のバースデイパーティが開かれたのはハーレムにある老舗のジャズクラブ、ショウマンズ・カフェ。セヴィオンが15歳の時、映画『タップ』('89)でグレゴリ-・ハインズとともに共演したサミー・デイビスJr.もかつては常連だったこのクラブ、毎週木曜日にはタップの神様といわれるハニー・コールを記念してオープンステージのタップナイトが行われている。セビオンもたまにぶらりとそのステージにあらわれタップ愛好家に交じって天才の足さばきを披露する。この日はセヴィオンのバースデイということで、タップナイトの常連ダンサーやごく身内の人々がお祝いに駆けつけた。ジャズの演奏とオープンステージで盛り上がる中、飛行機が遅れてセヴィオンは予定より4時間後に登場。半分もう来ないかもと諦めていたところだっただけに、みんなの感激はひとしお。
会場となったShowmans
375West 125th Street, NY
Tel: 212-864-8941

 そして誕生日プレゼントに伝説的タップダンサー、ビル・ボージャングル・ロビンソンが最後のステージで履いていたタップシューズを贈られて感激するセヴィオン。「これ履いてもいいのかな」というセヴィオンにみんなが「君のものなんだから好きにしていいんだよ」というなんだか可愛い一幕も。この天才タップダンサーを生んだ母であり女優のイベット・グローバーも「神様が何故私を選んだのか計り知れないわ。でもわたしが彼を生み出したのよ」と誇らしげにスピーチ。そのあとはもちろんセヴィオンのオンステージとなった。間近で観る彼のエネルギッシュでいて繊細なタップはあまりにもエキサイティング。レジェンドが紡ぎ出される瞬間を観てしまったという気がする。超大物スターにしてはささやかなバースデイパーティだったけど、セヴィオンを心から愛してやまないハーレムの人々に囲まれてのアットホームな雰囲気は2ミリオン以上の価値がある、なんて思ってしまう。そういえばクリントン大統領就任記念式典でもセヴィオンはパフォーマンスしてたけど、今回はいったいどうなるんでしょうか…。


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