TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)
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カンヌ映画祭でプレミアを、またNYフィルムフェスティバルのクロージングナイトを飾ったたことでも話題となったアン・リー監督、チョウ・ユンファ主演の『グリーン・ディスティニー』('00)が一般公開され注目されている。ボックスオフィス上の成績には表れていないが、NYタイムスの映画批評家が選らんだ今年のベスト10の第4位に登場したり、LAフィルム批評家連盟による今年のベストフィルムにも選ばれたりと、映画通の間ではかなり高い評価を得ている。LAフィルム批評家連盟による選出は、2月のアカデミー賞への影響も多大。ここで選ばれた作品のうち90%が、過去にオスカーのベスト映画賞にノミネートされている。ただしこの10年間でそれらのノミネート作品がオスカーをゲットしたのはたった2回だけ。そういった意味でもこの作品の行く末が気になるところだ。 |
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ドラマティックなストーリーのこの映画だが、見所はなんといっても重力の法則を無視したアクション・シーンである。『マトリックス』('99)でもおなじみの巨匠ユエン・ウーピン振り付けの、エレガントでスリリングなワイアー・ワークとデジタル処理による格闘技が堪能出来る。今年公開されたジェット・リーとアリーヤの『ロミオ・マスト・ダイ』('00)、キャメロン・ディアス、ルーシー・リューらの『チャーリーズ・エンジェル』('00)といったヒット作品の中でも見せ場となったマーシャル・アーツ。この映画の中でも香港アクションのベテラン女優ミシェル・ヨーと21歳の新人女優チャン・ツィイーによって繰り広げられるファイティング・シーンが圧巻。特に女性が華麗にそして果敢に戦う、というのが今年のアクション映画のポイントとなっているようだ。その影響もあるのか格闘技を習うことがニューヨークではひそかなブームとなっているらしく、先日発売された情報誌「TIME OUT New York」でもマーシャル・アーツ特集が組まれた。アジア人でも普通知らない人は違いを説明出来ない、カンフー、空手、少林寺の解説もあって役に立ちそう。 |
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この特集にはミシェル・ヨーのインタビューも掲載されている。英国ロイヤルバレエ団でクラシックバレエを勉強していた元ミスマレーシアの彼女が、いかにハードな鍛錬によって格闘技を身に付け周囲のリスペクトを勝ち得たかといった話や、また今回の映画撮影中に起こったアクシデントで膝に負傷を負ったが、タオイズムと禅の教えにより乗り越えることが出来たというエピソードなどが興味深い。しかもあれだけの格闘技を披露しながら、実は彼女は高所恐怖症なんだそうな。ダンスには美しさと情緒があるが、格闘技にはその上にパワーと難しさを兼ね備えているのが魅力、という彼女。同じアジア系女優でもルーシー・リューのいかにも今っぽいスターぶりとはまた違って、ミシェル・ヨーには伝統と品格を感じさせるものがある。『トゥモロー・ネバー・ダイ』('97)でジェームズ・ボンドの相手役として築いたハリウッドスターの地位をますます不動のものとし、今後はマーシャル・アーツが出てこない映画にも出演していく意向だそうだ。まだまだアジア系には高い壁があるアメリカ映画界で、彼女の今後の動向に同じアジア人として期待したい。
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