TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)
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主催者ジェフ・フライデーと 主催者兼監督のレジー・スコット
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ブルックリンのアート発信地BAM(Brooklyn Academy of Music)にて、毎年9月からマンスリーイベントを開催しているBCC(Black Cinema Cafe)が<アーバン・オーガニック・ショートフィルム・ショーケース>というタイトルの最終イベントを行い、4月で今シーズンの幕を閉じた。BCCはもともと主催者のレジー・スコットとジェフ・フライデーが、ブルックリンのアパートのリビング・ルームからスタートさせたブラック・インディーズ系映画イベント。現在ではアトランタ、シカゴ、デトロイト、ワシントンDCにおいてもイベントが開催され、今後はフィラデルフィア、ボルティモア、ニューオリンズ、ロサンジェルス他、アメリカ全12都市に拡大されていく予定だ。 |
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オーディエンスがいかにこの手のフィルムにハングリーであったのかが伺えるように毎回会場は満席となるが、もちろんそのほとんどはアフリカ系アメリカ人かマイノリティ。アメリカ全体の中で、白人社会が支配するハリウッド映画に飽き足らない、もしくは不満を持つ人々がいかに多いかを、皮膚で体験することが出来る熱気あるイベントだ。主催者の目論みは、ステレオタイプのアフリカ系アメリカ人の描き方を超えて、新たなる視点で制作されたインディペンデント・フィルムを、クリエーターとオーディエンスと共にシェアすること。上映会の後にはQ&Aの場がもうけられ、その後には会場を移して毎回カクテル・パーティが開かれる。通常の映画フェスティバルの観客は大半が映画関係者だが、BCCでは一般観客が多く招待され、彼らの生の意見を聞くことによってどんな映画が実質的に要求されているのかを測ろうとしている。昨年9月に上映された、各ブラックフィルム・フェスティバルの最優秀作品賞を受賞している『One Week』(00/カール・シートン監督)は、来月から一般公開が決定。一般観客の意見を反映することが出来るBCCが、ディストリビューター的な役割を果たす意味合いも大きい。 |
カウント・タイム・プロダクションズ監督 |
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ジュリアス・ディクソン・Jr監督
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今回のショーケースでは全6作品のショートフィルムが上映された。上映後、それぞれの作品のディレクターが舞台に登場し、主催者ジェフ・フライデーの司会でQ&Aが行われた。なんといっても今回一番喝采を受けたのは、もう一人の主催者でもあるレジー・スコットの監督デビュー作『Hello Love』。15分間の作品だが、エレベーターで出会った二人が出会った瞬間から恋に落ちるというストーリーをコミカルに描いている。また珍しい作品ではモハメド・アリの引退直前の様子を捉えたドキュメンタリー『The Last Hurrah』。ジュリアス・ディクソン・Jr監督が、メジャーのTV局に提示された大金での買い取りを拒否して、あえてインディーズとして世に出した貴重な映像作品だ。 |
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その他カウント・タイム・プロダクションの3Dアニメーション『You Must Learn』と昨年亡くなったビッグ・パンのミュージック・ビデオは、新しいジェネレーションをターゲットとしたメジャー展開の可能性を感じさせた。Q&Aで話題が集中したのは、インディーズ・プロダクションが持つ一番の悩みである資金調達について。それぞれの監督が、稼いだお金のすべてを制作費に投じて、パンと水のみの生活でおよそ15分程のショートフィルムを作ったと切実に語る。彼らの映画にかける情熱をサポートしているのは、監督に無償の労働力を提供するスタッフとイベントに集まる観客たち。制作費さえあればもっといい映画を作れるはずだ、という製作者の夢と願いが現実になるのはほんの一握りかもしれない。それでも映画を愛する彼らの意気込みと情熱が、現状を動かすことは間違いないだろう。 |
ロン・L・ジョーンズ監督
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ジェリー・ロドリゲス監督 |
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【今回の上映作品リスト】
★『Day for Night』(12min) ロン・L・ジョーンズ監督
★『You Must Learn & Big Pun』(7min) カウント・タイム・プロダクションズ監督
★『The Booth』(12min) アンソニー・アレイン監督
★『El Deseo/The Desire』(30min) ジェリー・ロドリゲス監督
★『The Last Hurrah』(8min) ジュリアス・ディクソン・Jr監督
★『Hello Love』(15min) レジー・スコット監督
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