TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)


 先週に続いて今回もニューヨークの舞台に関する話題をお届けします。


「プロデューサーズ」が上映されているセント・ジェームス劇場

 5月20日トニー賞の発表に先駆けて、もうひとつの権威ある舞台関係の賞ドラマ・デスク賞の受賞式が、リンカーン・センター内にある映画『フェーム』('80)の舞台にもなったアートとパフォーミングの専門学校ラガーディア高校で行われた。今年で46回目となるこの賞は毎年トニー賞の前に発表が行われ、その行方を占う指針ともなるといわれている。つまり映画関係でいえば、アカデミー賞に対するゴールデングローブ賞的な位置にあるともいえよう。トニー賞と違いは、ドラマ・デスク賞ではブロードウェイ作品に留まらずオフまたはオフ・オフ作品も賞の対象となること。2000年から20001年のシーズンにかけてNYで発表されたすべての作品が、27部門あるドラマ・デスク賞の審査対象となる。
 トニー賞との兼ね合いや世界的なスターや名作が生まれることもあり、舞台ファンやショービズ関係者にとっては見逃せないドラマ・デスク賞。たとえばこの賞がきっかけで世界に認められるスターとなったダスティン・ホフマンは、1967年にヴァーノン・ライス賞を授賞した翌日に『卒業』('67)への映画出演契約を交わした。1989年アカデミー賞4部門を獲得した名作『ドライビング・ミス・デイジー』は、1987年に映画と同じくモーガン・フリーマン主演でドラマ・デスク賞の5部門を獲得しメジャーへのステップとした。
劇場に掲げられている
「プロデューサーズ」のポスター


 今年の進行役は「ザ・サーチ・フォー・サインズ・オブ・インテリジェント・ライフ・イン・ザ・ユニバース」の主演女優リリー・トムソン。ケーブルTVNY1でもライブ中継が行われた。そしてやはり今年の注目度No.1は繰り返しお伝えしている「プロデューサーズ」だろう。話題のコンビ、マシュー・ブロデリックとネイサン・レインが、演劇部門の主演助演男優女優賞のプレゼンテーターをつとめて場を盛り上げた。また結果としては「プロデューサーズ」がミュージカル部門の最優秀作品賞、主演男優賞など全11部門を獲得。ドラマ・デスク賞の受賞作品としては新記録を樹立した。ミュージカル部門主演男優賞にはブロデリックとレインの両氏がノミネートされていたが、二人揃っての授賞とはならず、ネイサン・レインのみの主演男優賞授賞となった。ちょっぴり哀しそうなマシュー・ブロデリックだったけど厳しいショービズの世界。でもそんな彼をいたわるように「マシューとは個人的にも仕事の上でも素晴らしい関係を築くことが出来た。この賞は私に与えられた物じゃなくマシューと二人に与えられた物だ。われわれはパートナーだからね。そして映画でこの役を演じたゼロ・モステロとも分かち合いたい。」と授賞スピーチでネイサン・レインは語った。

主な授賞作品

最優秀男優賞演劇部門 最優秀女優賞演劇部門
リチャード・イーストン「愛の創造」 メアリーLパーカー「プルーフ」
   
最優秀助演女優賞演劇部門 最優秀助演男優賞演劇部門
ヴィオラ・デイビス「キング・へドリー(ll)」 チャールス・ブラウン「キング・へドリー(ll)」
   
最優秀主演男優賞ミュージカル部門 最優主演女優賞ミュージカル部門
ネイサン・レイン「プロデューサーズ」 マルラ・シェフェル「ジェーン・エア」
   
最優秀助演男優賞ミュージカル部門 最優秀助演女優ミュージカル部門
ゲリー・ビーチ「プロデューサーズ」 ケイディ・ホフマン「プロデューサーズ」
   
最優秀作品賞演劇部門 最優秀作品賞ミュージカル部門
「プルーフ」 「プロデューサーズ」
   
最優秀リバイバル作品賞演劇部門 最優秀リバイバル作品賞ミュージカル部門
「ゴア・ヴィダルのベストマン」 「42nd ストリート」


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