TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 ブロードウェイで活躍する日本人、宮城雄二氏インタビュー

 今回はブロードウェイでビジネスを展開するMiyanjoe International Ltd.の宮城雄二氏にインタビュー。ドラマ・デスク賞の審査員でもあり、トニー賞TV放送のコーディネートや解説を手掛ける宮城氏は、日本人では今一番のブロードウェイ事情通。ミュージカル解説本「ミュージカル・エクスプレス」や毎月発行されるブロードウェイ関連の情報誌「ニューヨーク・エンターテイメント・カレンダー」等を手掛け、日本へミュージカルへの興味と理解を広めようとブロードウェイのど真ん中にあるオフィスを中心に躍進する。


■Q1:ブロードウェイに来た動機
 ブロードウェイでビジネスをスタートした動機は、やはり舞台が好きだったからです。自分でも20代前半のときダンスをやっていて、24歳の時にこのまま続けるかやめるか迷ったのですが、とりあえず本場のミュージカルを観たりレッスンを取ったりしてみようと思ったのが渡米のきっかけでした。もちろんうまくいけばブロードウェイの舞台に立ちたいというとんでもない夢もありました。でも来てみて絶対無理だってすぐにわかりましたけど(笑)。世間知らずだったんですよ。実力以前にも舞台に立つにはグリーンカードが必要だいう事情すらも知らなかったんですから。でも何らかのかたちでブロードウェイにかかわることが出来ればいいなということで現在の仕事を始めました。


■Q2:ブロードウェイの魅力について
 舞台芸術はいろいろありますが、今の時代を顕著に表現できるのがブロードウエイ・ミュージカルだと思います。歌と踊りで感情を表現するすばらしい芸術です。流行のラップやロックを使ってミュージカルも出来るし、たとえばエルトン・ジョンといった今生きているミュージシャンが舞台を手掛けたりしている。その辺がオペラとは違いますよね。「レント」などは現在のNYが舞台で、同時代の感覚を共有できる。それと世界中からいろんな才能ある人が集まって、切磋琢磨しながら舞台を作り上げているというのも魅力ですね。ミュージカルという切り口で言えば、ブロードウェイは一番可能性があるしトップの場所でしょう。ここにいるだけでその雰囲気に触れることが出来るのは最高ですよ。


■Q3:ブロードウェイと映画
 舞台,映画,TV,音楽というエンターテイメントの世界は、ボーダーがはっきりと分かれています。たとえばライザ・ミネリ、ジュリー・アンドリュースらがボーダレスで成功していましたが、それは限られた一部の人だけ。最近ではマドンナ、スティングも舞台に挑戦しましたが、結局失敗しました。音楽や映画の世界で名前が通っているからといってそれだけで成功するとは限らないのがブロードウェイ。週8回公演を6ヶ月という契約ですから、根本的な実力を試される厳しい世界です。最近ではマシュー・ブロデリック、アラン・カミングらが映画と舞台の両方にコンスタントに出ていますね。ネイサン・レインもそうだけど、彼はどちらかというと舞台寄りかな。

 もともと映画で活躍している人で、ブロードウェイ出身の人は多いですね。アル・パチーノやダスティン・ホフマンもそうです。舞台と映画では観客の反応や空気がぜんぜん違うでしょうし、観客の気持ちを惹きつけた瞬間を体験する魅力というのは最高です。それでみんなやはり舞台に果敢に挑戦したくなってしまうのでしょう。最近の傾向として、映画作品がブロードウェイにアダプトされる作品が多いですね。みんながすでに知ってる作品はお客を集められやすい。観に来る人は、まったく聞いたことのない作品で冒険するより、聞いたことがある物を選びますよね。ショウビズの世界ですから、集客できるかどうかが基本です。


■Q4:ドラマ・デスク賞について
 審査員に選ばれたきっかけは「エンターテイメント・カレンダー」に特集記事を書いたことです。メンバーになって5年になりますが、最初にメンバーズ・カードが来たときには疑心暗鬼。でもそのうちショーの案内書やメンバーのミーティングの通知が来て、やっぱりほんとにメンバーになったんだと。すごく意外な感じがしましたが、栄誉あることなのうれしかったです。トニー賞に較べるとまだご存知ない方が多い賞なので、日系コミュニティに対して名前を広めていくのが与えられた役目だと思っています。


■Q5:今年のトニー賞と「プロデューサーズ」について
 「プロデューサーズ」は確かにすぐれた作品ですが、たまたま今回授賞記録を伸ばしたというだけで、過去上演された作品の中で一番おもしろいかというとそういうわけじゃないと思います。この作品の魅力は総合的なものでしょうね。まず主役の二人がそれぞれ独立して主役をはれる実力派です。それが二人同時に出演しているというのが魅力。またスーザン・ストローマンも今乗りに乗ってる演出家で振付師ですね。もちろん彼女も過去には失敗しているけど、最近ではすべて成功している。いまだかつて女性でこんなに忙しい舞台人はいないでしょう。


■Q6:今シーズンのお薦め作品、今まで観た中で一番
 もうトニー賞を取ってしまったということで「プロデューサーズ」と「42ndストリート」という他ないですよ。「クラス・アクト」や「フォリーズ」も薦めたくてもクローズが決定してしまったり。どんな良い作品でもチケットが売れなくては仕方ない厳しい世界です。ロングランでは「レント」「コンタクト」ですね。過去観た作品の中で一番印象に残ってるのは「トミー」です。背中に電流が走るくらいの感動を覚えました。


■今後のブロードウェイでのビジネスの展開
 もしも誰かが10億のお金をぽんと出してくれたとしたら、もちろんブロードウェイで10年間をかけて作品を作り上げてみたいですね。それは夢物語で、トニー賞の舞台で栄冠に輝ける人は、生まれてきた時にそれが約束されてる人だと思います。それよりも僕の役割は、今のミュージカルをもっと人々に知らせること。世界には、一生のうちに一度しかミュージカルを観ない人もいるわけです。でももしNYに来るチャンスがある人は、絶対に1本でもミュージカルを観て帰って欲しい。そうなれば日本の文化的意識も向上するんじゃないかな。


■Miyanjoe International Ltd.各社アドレス
MIL出版(NYエンターテイメント・カレンダー、ミュージカル・エクスプレスetc)
 330 West 45th Street #1J
New York, NY 10036
Tel: 212-582-0484
Fax: 212-315-4038
E-mail: miyanjoe@rcn.com

チケット・エージェントMIL
  Tel:212-582-1766
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