TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 映画に登場した場所を訪ねて Part5

 今シリーズ第5回目は、映画やテレビ、そしてミュージックビデオの撮影が行われたレストランを3軒取り上げてみました。


■KATZ'S DELICATESSEN(カッツ・デリカテッセン)

 80年代後半の代表的ラブコメディ『恋人たちの予感』(ロブ・ライナー監督/'89)でメグ・ライアンのフェイク・オーガズム・シーンが撮影されたロウワー・イーストサイドのカッツ・デリ。そのシーンでメグ・ライアンが食べていたパストラミ・サンドは、おかげで世界一有名となったといわれている。とはいえ創業114年を誇るこのデリカテッセンは、撮影以前からカーター、レーガン、クリントンら歴代大統領が訪れた上、感謝状まで送られている老舗。NYのデリカテッセンの中では抜きん出て有名なのに、雰囲気は昔ながらの下町の食堂らしいカジュアルさを湛えていて値段も安い。
 味の方もNYプレスのベスト・ホットドッグ賞に選ばれただけあり、サラミやハム、ソーセージ類が好きな人たちの間では絶大な人気。学食みたいにやたら広い店内の壁には、過去に来店したセレブの写真がずらりと並び、クリントン元大統領が座った席もあったりして、その様子はなんだか下町のハリウッド・プラネットと呼んでみたくなる風情が。バーブラ・ストライサンド、トニー・カーティス、ダン・エイクロイド、ウータン・クラン、ビョークらの写真を発見。もちろんメグ・ライアンの写真もあります。
KATZ'S DELICATESSEN
205 E Houston St.
New York, NY 10002
212-254-2256


■CAFE HABANA(カフェ・ハバナ)

 レニー・クラビッツのキャッチーなラブソング「アゲイン」(00)のビデオに登場したノリータのカフェ・ハバナは、元ダイナーが時代とともにお洒落なカフェに見事に進化した成功例として名高い。前回取り上げたカフェ・ジタンと共にノリータのカフェ人気を二分し、ファッショナブル・ピープルの集合地点となっている。
 ビデオを観てもわかるとおり店内はかなり狭いが、ピーク時には客席数より外で待ってる人のほうが多いのではないかというくらい大人気。キューバー・スタイルのユニークさ、そして安くて美味しい料理が人気の理由だ。チーズが乗ったグリルドコーンは一番のお薦めディッシュ。デザートはキューバコーヒーで。
CAFE HABANA
17 Prince St.
New York, NY 10012
212-625-2001


■TOM'S RESTAURANT(トムズ・レストラン)

 かつてはスザンヌ・ヴェガの大ヒット曲「トムズ・ダイナー」('87)に登場して有名となったアメリカン・ダイナーだが、昨今は『となりのサインフェルド』('93~'98)のエピソードの舞台になって再び脚光を浴びたトムズ・レストラン。コロンビア大学の近くということで学生と大学職員の溜まり場となっている。
 このダイナーも昔ながらの下町の雰囲気で、ウェイトレスとウェイターは年季が入っていて決しておねえさんおにいさんとは呼べない方々だ。そして誰が食べても冷凍食品と言い当ててしまいそうなディッシュが来ても、安さと話のネタに文句はいえまい。サインフェルド・マニアにとっては、クレイマーの肖像画を観れるだけで心安らぐ憩いの場所となるに違いない。『リトル・ニッキー』(01)の一場面で、アダム・サンドラーの顔どアップの背景にここの看板が登場していたことも付け加えておこう。
TOM'S RESTAURANT 
2880 Broadway
New York, NY10025
Tel: 212-864-613


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