TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 NY夏の風物詩オープン・エア映画上映会

 夏たけなわのニューヨークでは、毎日至る所で野外フリーイベントが行われる。気取った雰囲気が苦手だったり、料金が高くて敬遠がちだったりするオペラやクラシックのコンサートがカジュアルに楽しめる絶好のチャンス。この日ばかりはピクニックをしながら似非文化人を気取って、優雅な気分に浸るニューヨーカーが続出する。
 しかもなぜかこの日は戸外でのアルコールが大目にみられているようで、ワイン片手に談笑する観客の合間を巡回する警官も見て見ぬフリ。こんな開放的な夏ならではのイベントは、コンサートだけに限りません。映画好きのためのフリー映画上映会も目白押し。

 今回はマンハッタンで行われている最もポピュラーなオープンエア映画イベントを二つピックアップ。夏休みをNYで過ごす予定の方はぜひ参加して、ニューヨーカー気分を味わってみては。


■ブライアント・パーク・フィルム・フェスティバル

 6月18日から8月20日までの毎週月曜日に行われている毎年恒例のフィルム・フェスティバル。ミッドタウンのど真ん中にあるブライアント・パークは、オフィス帰りの人々には絶好のロケーション。週始めとはいえ夏は遊びモードのニューヨーカーたちの間で、早い時間から芝生の上にブランケットを広げての席取り合戦が行われる。
 ラインナップは60年代以前の古き良き時代の映画で、星空の下で往年の大スター、エルビス・プレスリーやキャサリン・ヘップバーン、ケリー・グラントらを観ようという謳い文句。仮設とはいえ充分巨大なスクリーンに最新映画のプレビューが映し出されると、立ち上がったり歓声を上げたり口笛を鳴らしたりと会場は異常に盛り上がる。野外ならではの開放感か、それともタダで映画を観ることが出来るうれしさなのでしょうか。ケーブルネットワークのHBOがスポンサーとなってこのフィルムフェスティバルが開催されて9年目。夏の間一度ならず何度も足を運んでしまう定番のフィルムフェスティバルなのです。
6/18 『ビバ・ラスベガス万歳』(1963年、ジョージ・シドニー監督)
6/25 『乱暴者あばれもの』(1953年、ラズロ・ベネディク監督)
7/2 『真夏の夜のジャズ』(1959年、バート・スターン監督)
7/9 『深夜の告白』(1944年、ビリー・ワイルダー監督)
7/16 『我が家の楽園』(1938年、フランク・キャプラ監督)
7/23 『裏窓』(1954年、アルフレッド・ヒッチコック監督)
7/30 『第十七捕虜収容所』(1953年、ビリー・ワイルダー監督)
8/6 『フィラデルフィア物語』(1940年、ジョージ・キューカー監督)
8/13,14 『ドクトル・ジバゴ』(1965年、ディビッド・リーン監督)
8/20 『巴里のアメリカ人』(1951年、ヴィンセント・ミネリ監督)


■リバーフリックス

 ハドソンリバー沿いのピア25とピア54の2箇所で、7月から8月にかけての水曜日と金曜日に行われている野外映画上映会リバーフリックス。こちらは20世紀のカルトフィルムを中心にラインアップが選出されている。
 今月21日トライベッカにあるピア25では、トニー賞で話題となった「プロデューサーズ」のオリジナル映画が上映され、週末の夜を楽しむ人々で賑わった。ハドソンリバーの対岸に沈んでゆく夕日を眺めたあと映画がスタート。小規模なイベントなのでスクリーンは小さくてしょぼいが、無料のポップコーンが配られるなど町内会の納涼映画大会みたいなアットホームな雰囲気が楽しい。いかにも映画好きが映画好きのために選んだといったラインナップも魅力たっぷりです。
★ピア 54 水曜日

7/11『タクシードライバー』 (1976年、マーティン・スコセッシ監督)
7/18『サイコ』(1960年、アルフレッド・ヒッチコック監督)
7/25『カッコーの巣の上で』 (1975年、ミロシュ・フォアマン監督)
8/1 『パルプ・フィクション』(1994年、クェンティン・タランティーノ監督)
8/8 『ロッキー・ホラー・ショー』 (1975年、ジム・シャーマン監督)
8/15『未来世紀ブラジル』(1985年、テリー・ギリアム監督)
8/22『マトリックス』(1999年、ラリー&アンディ・ウォシャウスキー監督)
8/29『This is Spinal Tap』 (日本未公開/1984年、ロブ・ライナー監督)
★ピア 25 金曜日

7/13『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1986年、フランク・オズ監督)
7/20『プロデューサーズ』(1968年、メル・ブルックス監督)
7/27『ハロルドとモード』(1971年、ハル・アシュビー監督)
8/3 『メリー・ポピンズ』(1964年、ロバート・スティーブンソン監督)
8/10『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年、フィリップ・カウフマン監督)
8/17『ホワッツ・アップ・タイガー・リリィ?』 (1966年、ウディ・アレン監督)
8/24『Willy Wonka and the Chocolate』(日本未公開/1971年、メル・ステュアート監督)
8/31『博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』 (1964年、スタンリー・キューブリック監督)


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