TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 マドンナ・ワールド・ツアー・レポート

 デビューして以来、数々の映画に出演し『エビータ』で97年ゴールデングローブ主演女優賞を獲得、女優としての地位を確実に積み重ねてきたマドンナ。私生活でも第2子をもうけ、子供の父親である映画監督ガイ・リッチーとついに結婚するなど充実の極みにいる彼女が、ミュージシャンとして久々のワールドツアーを行っている。今回は世界中で話題になっているマドンナのコンサートの模様をレポート。
 6月9日バルセロナでスタートした“Drowned World Tour”はミラノ、ベルリン、パリ、ロンドンを経て、7月21日フィラデルフィアを皮切りに米国へ上陸。その後ニューヨークで25日から31日までの5日間にわたるマディソン・スクェア・ガーデンでの公演が行われた。

 マドンナがコンサート・ツアーを行なうのは1993年以来なんと8年ぶり。ファンにとっては待ち焦がれた生マドンナだ。映画を観るだけじゃなくて本物のステージを観たいと待ち続けていたファンが多いだけに、ヨーロッパも含めて全48ヵ所で行われているチケットは即座にソールドアウト。高い確率をかいくぐってマディソン・スクェア・ガーデンに来たファンは感激もひとしおで、全員総立ちとなってステージに登場したマドンナを迎えた。
 舞台に設置されたいくつかのスクリーンには実況ライブとMVDが映し出され、ステージ遠方では小指の先くらいの大きさにしか見えないマドンナと同時に映像を楽しめる仕掛け。コンサートというよりも、105分間にわたって構成されたスペクタクル・ショーの中、マドンナはパンク風の出で立ちでギターをかき鳴らし、カウガール・スタイルで機械仕掛けの牛に乗り、エビータの主題曲でダンスを踊り次々に変身していく。中でも26フィートの袖があるゴルチエ・デザインの着物姿は、なんだか紅白の小林VS美川を思い出してしまった。

 全体的に印象に残ったのは、前半部分のアジア的に演出されたステージ。『グリーン・デスティニー』(00)を意識したみたいなワイアー・マーシャル・アーツ、着物や刀を小道具に暗黒舞踏やタイ舞踊風ダンス、あげくの果てにスクリーンにはジャパニーズ・エッチ・アニメが映し出される。芸者風の出で立ちでサムライ・ダンサーにいたぶられるマドンナは、アジアびいきなのかと思いきや、実はそういうわけではない。このシーンのラストは黒のロン毛のかつらをいきなり取って金髪に戻ったマドンナが、ライフルでアジア人ダンサーを撃つ。その後場面は一転してアメリカ西部へ。マドンナって白人至上主義なのかと思わせる演出だ。そういえば今回日本及びアジアへのツアーはないが、これを見られたくないからとか?
 音楽面に関して付け加えると、今回のコンサートは一番最近のアルバム“Music”(00) と “Ray of Light”('98)からの選曲がほとんど。終盤近くにようやく「ラ・イスラ・ボニータ」が始まると、会場内はおきまりの大コーラス。有無を言わせない構成のショーは、ポップ界の女王マドンナここに在りというテーマを十二分に見せ付けられたかのようだった。


■コンサート会場に来たファンの声

 コンサートの熱気をお伝えするにはファンの声をお届けするのが一番。そこで4日目のコンサート会場に来ていたファンの声をキャッチしてみました。

 タニヤとサラは高校生でマドンナの熱狂的なファン。高くて誰も買わない$30もするパンフレットを買わずにいられないくらいのマドンナ信望者。初めてのマドンナのコンサートではしゃいでる様子がとっても可愛いかった。
◆タニヤ(写真左)
「マドンナは今の時代で一番素晴らしいポップスターよ。デビューしてからずっと第一線のエンターテイナーで、その上アーティストとしての実力もある。フェミニストとして私たち女性を代弁してるし、プライベートの生き様も最高にかっこいいわね」

◆サラ(右)
「今日のコンサートはすごく楽しみにしてたの。この会場に来れて本当にラッキー。映画で観る女優のマドンナももちろん素敵だけど、パワフルなステージをナマで観るチャンスなんてめったにないもの。チケットが手に入るなら毎日でも観たかったわ」

 ジュリアンは実はプロデビュー間近のデュオグループ“DJ”のメンバーの一人。マイアミからマドンナのコンサートに駆けつけた。マドンナって業界内でも絶対に招待券を配らずに、レコード会社のスタッフでもチケット買ってるんだよ、なんていうウラ話もまじえながらファンとしてまたアーティストとしての視点から、快くインタビューに答えてくれた。
◆“DJ”ジュリアン
「僕は2日目のコンサートも観たんだけど、素晴らしい舞台アートだったね。凝ったステージはもちろんだけど、曲目のセレクションや構成もうまい。マーシャルアーツやサムライを登場させたアジア的な舞台は、見所がいっぱいあって凄かった。ただ残念なのは、たった3言しかMCがなかったこと。ティナ・ターナーみたいに大御所のアーティストでも、舞台の上から観客との対話を楽しんでるよね。マドンナにももっとファンサービスをしてもらいたかったかな。その点だけがファンとして残念だけど、それ以外は最高だよ」
■“DJ”のオフィシャル・ウェブサイト> http://www.frankfarian.com/DJ/index.htm


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