TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 事件から立ち直るために行われたショービズ界の出来事

 9月11日のテロ事件は、ショービジネスにも打撃を与えた。事件の3日後から再開されたブロードウェイだが、客足は延びず閉演を余儀なくされる作品もある。ジュリアーニ市長がNYを復興させるためにミュージカルを観ようと呼びかけ、現在ブロードウェイは少しずつ活気を取り戻しつつあるようだ。しかも、打撃を受けてもショービジネス界は、テロ事件の犠牲者のためのベネフィットやチャリティのために強く結束している。
 トニー賞作品「キス・ミー・ケイト」は9月23日に上演を終えると発表。しかしその後、出演者や労働者の給与を25%カットし、25%でチケットを購入しチャリティのために配るという条件で、開演期間をとりあえず2週間延長することとなった。

 1999年10月25日にスタートしたこのショーは、当初の予定では今年の12月30日が楽日。23日は終了の噂を聞いてミュージカル・ファンが駆けつけ、満員御礼となった。この調子で客足が戻れば予定通りの開演期間で終了できる可能性も。出演者らによって買い上げられたチケットは、NY消防局家族救済センター、アメリカ赤十字、ニューヨーク市などに配られる。
なんとか2週間の延長が決定したキス・ミー・ケイトのビルボード
 25%の給与カットを実施したショーは「シカゴ」、「レ・ミゼラブル」、「オペラ座の怪人」、「レント」、「フル・モンティ」。「ロッキー・ホラー・ショー」と「バット・ボーイ・ザ・ミュージカル」は23日にクローズとなってしまったが、どちらも10月に復活する可能性もあるとの見通し。
 9月24日ウェストビレッジにあるオフブロードウェイシアター、ミネッタ・レーン・シアターでは豪華キャストによる「The 24 Hour Plays」のベネフィット上演が行われた。こちらは犠牲者の子供達が、ヒーリングのために壁画を作るための資金となる。フィリップ・シーモア・ホフマン、メアリー=ルイーズ・パーカー、マリサ・トメイ、リブ・シュライバー、ロジー・ペレス、ナターシャ・リオン、ベンジャミン・ブラット他総勢22名が舞台に登場。
 「The 24 Hour Plays」と題されたイベントは、いわば演劇競技会みたいなもの。上演前日の夜10時にライター、ディレクター、デザイナー、出演者が集まりミーティングを行う。ミーティングの後、ライターだけ残ってそれぞれ10分間の作品を書く。その後朝7時に監督が戻って台本を読みキャステイングを行い、出演者は朝8時に集まって再び全員でミーティング。朝9時からリハーサルののち、本番は夜8時という大変ハードで演劇おたくなイベントだ。 もともと1995年から続けられているイベントだが、今回はテロ事件のためのベネフィット上演となった。
 また、平和と愛を込めて100人以上のセレブがミッドタウンに集合。ナイル・ロジャーズの名曲「ウイ・アー・ファミリー」のレコーディングを行った。スパイク・リー監督がまとめ役となっての企画だ。音楽、スポーツ、映画、TV界からダイアナ・ロス、ディオンヌ・ワーウィック、パティ・ラベル、マコーレー・カルキン、マシュー・モディン、ジョン・マッケンロー、アナンダ・ルイスといった面々が大集合し、70'Sディスコ・ナンバーを大合唱。

 このレコーディングの3つの目的は、マイノリティグループの人種差別攻撃から守ること、寛大な見解をメディアや教育によって促進すること、危機に関する様々な情報の提供を先導すること、だという。CD売上金は、そのための基金となる。
WTCにあったディスカウント・チケット・ショップはなくなった。
事件前は長い列が出来ていたブロードウェイ店も閑散としている。


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