TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 第39回ニューヨーク・フィルム・フェスティバル
 芸術の秋にふさわしく、世界中から重要な映画作品を招聘して毎年開催されるNYフィルム・フェスティバルがスタート。NYの数ある映画祭の中で最も注目されるこのフェスティバルだが、昨年の上映作品の中からは『グリーン・ディスティニー』(00)、『Pollock』(00)がアカデミー賞作品となっている。今年はどんな作品がラインアップされているのか気になるところ。
 9月28日から10月14日まで開催される今回のフィルム・フェスティバルでは、フランスからヌーベルバーグの巨匠二人の作品がオープニングとクロージン・グナイト共に選ばれて注目されている。まずオープニングナイトを飾ったのはジャック・リヴェット監督の19作品目に当たる『VA SAVOIR/Who Knows?』(01)。そしてクロージング・ナイトにはジャン・リュック・ゴダール監督の『Eloge de l'Amour/In Praise of Love』(01)が上映される。今年のNYフィルム・フェスティバルは、まるでフレンチ・フェアと名付けても良いくらいフランスものが注目されているようだ。今回上映される23本のうち、合作も含めた仏映画は上記2作のほか9作もある。
 作品数ではフランスについでアメリカから4作品が上映される。そのうちの一作品は、デビッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』(01)。同監督の期待の新作は、フェスティバルの中日にセンターピースとして上映される。

 現世界情勢を知る上で観るべき作品は、イランのマジッド・マジディ監督『BARAN』(01)。テヘランで暮らす若いアフガニスタン人を主人公にした作品だ。その他エジプト、ポルトガル、デンマーク、アルゼンチンなど興味深い作品も多数。

 昨年、日本からは、大島渚監督『御法度』(00)、北野武監督『BROTHER ブラザー』(00)、青山真治監督『ユリイカ』(00)がこの映画祭に出品された。今年は岩井俊二監督『リリィ・シュシュのすべて』(01)と、今村昌平監督『赤い橋の下のぬるい水』(01)が上映される。10月13日に上映される『リリィ・シュシュのすべて』はすでにソールドアウト。ニューヨークでもブームとされるジャパニーズ・サイバー・ポップ・カルチャーへの注目度を覗い知ることが出来る現象かもしれない。
 その他特別出品として、マーリー・レナー監督が再編集した、ジミ・ヘンドリックスのライブ・ドキュメンタリー作品『BLUE WILD ANGEL: JIMI HENDRIX LIVE AT THE ISLE OF WIGHT』(01)とマーティン・スコセッシ監督『IL MIO VIAGGIO IN ITALIA』(01)が上映される。スコセッシ監督の新作は、幼年時代を過ごしたリトル・イタリーで観た思い出に残るイタリア映画を辿ったもので4時間6分のドキュメンタリー大作となっている。
 このフェスティバルではいまさら大々的には謳われていないが、会場となるリンカーン・センターはアメリカ赤十字やツイン・タワー基金、NY消防局への寄付を行っている。まだまだ不安をかかえて日々を過ごすNYだが、大々的なフィルムフェスティバルを予定通り開催出来るまでになってきている。


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