まだまだ続くチャリティ・イベント「ザ・コンサート for ニューヨーク・シティ」
 9月11日に起こったテロ事件以来、各地で様々な義援金集めのイベントが開かれてきたが、先週末マディソン・スクエア・ガーデンで行われた「コンサート for ニューヨーク」では、ロック界や映画界から大物スターがチャリティ出演。WTCで一躍ヒーローとなったFDNY、NYPDそして救助隊を家族共々招待して6時間にわたるショーを行った。
 まず真っ先に登場したデビッド・ボウイが、サイモンとガーファンクルの「アメリカ」、そして自身の名曲「ヒーロー」を歌い上げ、この後ラストに登場した大御所ポール・マッカートニーに到るまで錚々たるメンバーが続いた。ロック界からはザ・フー、ジョン・ボンジョピ、ジェームス・テイラー、エルトン・ジョン、ビリー・ジョエル、ミック・ジャガー、キース・リチャード、エリック・クラプトン、ジョン・メレンキャンプら大物がこぞって大集結。

 最近活躍中のアーティストでは、ディスティニーズ・チャイルド、ジェイZ、メーシー・グレイ、インディア・アリーらが登場した。バックストリート・ボーイズにいたっては、サンディエゴのコンサートをキャンセルしてこちらのビッグ・イベントにジョインしている。
 このコンサートには、5000人以上のNY警察官、NY消防士、救助隊員とその家族が招待された。チケットも売り出されたが、こちらはベネフィットのためなので$250~$1,000という高値。とはいえこれだけの名立たるメンバーを一度に観られるのだから、ある意味妥当なお値段だったかも。すでにチケットのみの収益金は$14ミリオンとなっている。この他電話やネットでのドネーションと出演者のサイン入りギター、ドラムセットのオークションでの売上金が加算されると、かなりの義援金が集まることだろう。これらはやはりWTCで犠牲となった方々の家族へと渡るが、アフガン難民に渡る予定は残念ながらない。
 映画界からはビリー・クリスタルを筆頭に、マイケル・J・フォックス、メグ・ライアン、スーザン・サランドン、ジョン・キューザック、ハリソン・フォード、ジュリア・スタイルズ、ジェリー・セインフェルド、ジム・キャリー、ハリー・ベリー、クリス・ロック、グウィネス・パルトロウetcらが登場。犠牲者の遺族や部署のメンバーを力強いスピーチで紹介したり、また涙を浮かべながらステージに立つ人もいた。

 またこのコンサートでは、ニューヨークになじみが深いウディ・アレン、スパイク・リー、マーティン・スコセッシ、ジェリー・セインフェルド、エドワード・バーンズ、ケビン・スミスらが監督したショート・フィルムが上映され、イベントを盛り上げた。
 イベントの出演者の主な顔ぶれ、たとえばマッカートニー、ジャガー&リチャード、エルトン・ジョン、ボウイらは英国人。でもアメリカ&NYをサポートするという気概で大変盛り上がっていたことに対して、援助の気持ちに国境はないなどと素直に思えなかったのは、米英共同でのアフガン攻撃が背景にあるからか。

 ちなみにこのコンサートは「平和」をテーマにしたものではなく、NYPD及びFDNYをヒーローとして称えるために行われたようなものだ。消防士の父を持つポール・マッカートニーの使命感は決してわからなくもない。その中で唯一リチャード・ギアが「暴力と復讐よりも慈悲と理解を」という平和主義に基づくスピーチを述べた。ダライ・ラマの信望者である彼ならではの意見だが、観客からはブーイングが起こったのはいうまでもない。現在のアメリカ大衆心理の影がはっきりと見えた一場面だった。


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