TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)
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イーサン・ホーク出演のオフ・ブロードウェイ作品紹介
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大ヒット中のシリアス・アクションドラマ『トレーニング・デイ』(01)に出演し、また新たなる局面を切り開いたイーサン・ホーク。現在スクリーンのみならず、オフ・ブロードウェイの舞台にも登場して話題を呼んでいる。サム・シェパードの戯曲「The Late Henry Moss/ザ・レイト・ヘンリー・モス」のステージの模様をお届けしましょう。
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イーサン・ホーク、ガイ・ボイド、アーリス・ハワードらが出演する演劇作品「The Late Henry Moss/ザ・レイト・ヘンリー・モス」が、9月5日から11月4日までシグニチャー・シアターで上演されている。同作は現代アメリカ劇作家の第一人者、サム・シェパードの最新作。俳優としても実績を重ねるサム・シェパードだが、残念ながら今回のステージには登場していない。
サンフランシスコのシアター・オン・ザ・スクエアで2000年昨秋にプレミア上演されたこの作品は、サム・シェパード自ら演出。またキャストの顔ぶれもニューヨーク公演とは異なり、ニック・ノルティ、ショーン・ペン、ウディ・ハレルソン、チーチ・マリンらが名を連ねていた。出来れば併せてこちらも観てみたかったものだ。
舞台はヘンリー(ガイ・ボイド)が、メキシコ人女性コンチャーラ(シーラ・トウセイ)とふたりでダンスを踊りながらステージを横切る暗示的な場面からはじまる。この作品のストーリーの軸となっているのは、亡くなった父親ヘンリー・モスのもとに駆けつけた兄弟、アール(アーリス・ハワード)とレイ(イーサン・ホーク)の確執となっている。 |
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久しぶりに再会した兄弟は、お互いの現在の境遇すらも知らず、過去の記憶もかみ合わない。父の死に立ち会った兄に疑惑を持ち、死因を鋭く追及しようとする弟。ツバを飛ばしながらの罵り合いや、狭い舞台を派手に立ち廻っての殴り合いの兄弟喧嘩が繰り広げられる。そこにお人よしの隣人エステバン、奇妙なタクシードライバー、ヘンリーとその彼女コンチェーラといった個性的なキャラクターが次々と登場し、舞台に精彩を加えていく。 |
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ヘンリー・モスを演じるのはガイ・ボイドは『ストリーマーズ 若き兵士たちの物語』('83/ロバート・アルトマン監督)で第40回ベネチア映画祭、主演男優賞を獲得している名優。アーリス・ハワードは、『フルメタル・ジャケット』('87/スタンリー・キューブリック監督)に出演。また強烈なキャラで観客を沸かしたタクシードライバー演じるクラーク・ミドルトンは、現在上映中の『Serendipity』(01/ピーター・チェルソム監督)に出演している。
そして舞台の上のイーサン・ホークは、やっぱり有無をいわさずカッコイイ。激しく粗野な役の中に、繊細で知的な部分が見え隠れするのだ。『いまを生きる』(89/ピーター・ウィアー監督)ではじめてイーサン・ホークをスクリーンで観たときから10年以上。成長したホークのカッコ良さはルックスのみにとどまらない。ハリウッド系メジャー俳優とは一線を画した存在の役者としてのキャリアを築き、96年には「The Hottest State」というタイトルの小説を出版。また年内にはパートナーのユマ・サーマンを起用した初の監督作品『Chelsea Walls』(01)が上映予定だ。俳優としての枠にとどまらない存在のイーサン・ホークは、今回の劇作家サム・シェパードに共通するところがある。 |
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全体の印象としては、良い演劇作品を鑑賞したというより、イーサン・ホークをナマで観てすごく得したって気分。サム・シェパード先生、ごめんなさいってことですね。 |
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