NYフィルムシアター事情/タイムズスクエアの歴史的映画館

 マンハッタン内だけでも54館ある映画館。今回はその中でも目まぐるしく変貌する娯楽街、タイムズスクエアの要ともなっているシネマコンプレックスにスポットを当ててみました。

 昨年春にリニューアル・オープンしたシネコンが、実は90年の歴史を持つ由緒有る劇場だったってニューヨーカーも知らない話かも!?
 マンハッタンの一大歓楽街タイムズスクエア周辺は、ここ2、3年の間に劇的な変化をとげている。特に42NDストリート沿いのヤバい系のアダルトショップは一掃され、その後にはマダムタッソー・ミュージアムやBBキング・ライブハウス、挙句はサンリオショップまでがずらりと建ち並び、家族連れにもやさしい健全な娯楽街に変容を遂げた。
 そんなタイムズスクエアの見事な激変の中、古い歴史を持つ“AMCエンパイア25”も大変身し昨年春に再オープン。25スクリーン、4764座席を持つこの界隈でも一番人気のシネマコンプレックスとして、順調に客足を伸ばし続けている。

 “AMCエンパイア25”は、1912年に建築家のトーマス・ラムによってデザイン、建設された長い歴史を持つ劇場だ。当初はアメリカ随一の物まね芸人ジュリアン・エルティンジに名前の由来を持つ「エルティンジ劇場」としてオープン。コメディ、演劇、バーレスクを呼び物にしたパフォーマンスシアターだった。

 無声映画でもおなじみのボードビル芸人、アボットとコステロもこの舞台でデビュー。またクラーク・ゲイブル、ローレンス・オリビエもこの劇場でパフォーマンスを行っている。
 パフォーマンス・アートの誇らしい軌跡を持つこの劇場は、その後1942年にコメディ映画専門の映画館“ラフ・ムービー”に変貌。1954年に現在の名前の元となる“エンパイア”となったが、80年代半ばにクローズ。荒廃した42NDストリートを復興させるプランのひとつとして、98年より工事が着工され、昨年4月に華々しくオープンして現在に到る。
 エントランスを抜けロビーに入ると、アーチ型の吹き抜けドームとなっている。90年前に劇場が創設された当時の姿を偲ばせるこのドームとバルコニーを利用したカフェ・ラウンジが、ライブ・ミュージックも聞けるスペースとして近々オープンする予定だ。

 またルーフ・トップでは、プレミア・パーティが行われることも。“AMCエンパイア25”は歴史的建物を利用し、独特の魅力を打ち出しているシネコンとなっている。

◆AMC Empire 25 Theatres
234 West 42nd Street at 8th Ave.
New York, NY 10036


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